第79話 あんが~がーる

「バスガス爆発…」

 夏男が保健室の窓から焼野原…校庭を見てボソリと呟く。

「先生…絆創膏は、もう充分なんで、せめて軟膏とかでないんですか?」

「そうね、だせれば出せたんでしょうけど…」

「いや…ココは保健室なんだから、火傷にいい感じの薬くらいないんですか?」

「そうね、あるのかもしれないけど、だとしたら先生の能力ってなに?って感じになってちゃうでしょ」

「俺、割と爆心地の中心にいたんですよ、自分でもね、こうして喋ってるのが不思議なくらいなんですよ」

「そうね、ガス大爆発でしたものね、先生も驚いたわ、2階で観戦していてよかったなと思うもの」

「観戦って、スポーツかなんかと勘違いしてません?」

「あらっ、牛追い祭りって、あんな感じなのかしらと思って見てましたけど」

「牛追いっていうか追われてましたけどね…俺のゾンビがスケルトンで粉砕骨折で昇天で、俺も逝きかけたというか、死を一段飛ばしで瞬間火葬されたんですけど」


 ガラッ…

「先生、冬華の前髪チリチリです」

 冬華の前髪はチリチリであった

「まぁ、でもね先生に出来ることといえば…」

 立花先生は冬華の前髪に絆創膏をペタッと貼った。

「元通りになるですか?」

「そうね、あるいは時間が解決するわ」


「これでよし」

 立花先生は適当に処置した2人を後に保健室を出ていった。

「どこ行くです?」

「ん? エサの時間よ」

「ゾンビのですか?」

「そうよ、一緒に行く?」

「行くです」


 裏口のドアを開けると、すでに数十人のゾンビがクサクサと群れている。

「少し減った気がするわ」

「朝、吹き飛んだです」

「そうね、粉砕されたものね」

 ドアを開けると、焦げ臭く、まだガス臭い。

「今日はご馳走よ、さぁお食べなさい」

 バケツから焼き肉を蒔き始める。

「それ牛肉ですか?」

「そうよ、和牛よご馳走よ」

「ソッチはなんです?」

「牛モツよ新鮮よ」

「………」


「先生、ココに置いておきますよ」

「佐藤君、ご苦労様」

「小太郎…聞きたいですが」

「なに四宝堂?」

「それ…ミノタウロスですか?」

「ミノタウロス? あぁ…松坂さん家の闘牛だよ」

「ホホホッ…一頭まるまる、こんがり焼けたわ」

 立花先生が嬉しそうに笑う。

「ミノタウロス…冬華のミノタウロス…ステーキ用だったです」

 屋台も食肉も失った冬華、無表情ではあるが、涙を堪えているように見えないことも無い。

(あの野郎…許さないです‼)


 田中さんに対する、良く解らない復讐を誓う冬華であった。

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