第77話 び~すとますたー

「縁日か‼」

 立花先生がツッコむのも無理はない。

 冬華の屋台 小太郎の屋台 田中さんの屋台 校庭に揃った冬華シリーズ、そのどれもが例外なく、何の屋台か解らないという機密っぷり。

「特務機関か‼」


「ボンベなら俺のを使うといい…少年よ」

「まぁ、あの方は自称市長だった田中さんでしてよ」

「わずか数週間で、あの変わりよう、男子3日会わざるなんとか…ほにゃららだ」

 秋季が適当なことを言う。

「スーツのイケメンがジージャンの残念に変わったわ…先生がっかりよ」

「来る日も、来る日もチョコばかり…俺は気づいた、チョコがダメなんじゃないか?

 とね…」

「ファーストインパクトから気づいてましたわよね?」

「そうね、今さらのセカンドインパクトを起こされても困るわよね」

「で? 田中氏…何しに戻ってきたのか?」

「知れたこと‼ ……なんとなく人恋しくなったからだ」

「解る‼ 実に解るぞ田中さん、俺も集団の中に身を置いていても独りを感じているからな」

「それは甘えだ‼ オマエの孤独は自らが創り出した心の壁…俺のは…俺のはガチの孤独だ、一緒にするな‼」

「なにをー‼ 貴様にシカトぶっこかれるツラサが解ってたまるかー‼ 小太郎‼ あんな屋台、叩き壊してしまえ‼」

「……ご自分でどうぞ…僕はもう…屋台を引けません、引きたくありません」

「そうか…貴様の駄々に付き合っている暇はない、小太郎、オマエには失望した」

 夏男がポケットから取り出したもの…ブートジョリキア

「なっ? 本気か夏男…オマエ、またあの悲劇を起こすつもりなのか?」

 秋季は即座に察したのだ、タバスコの200倍とも言われるブートジョリキア、その辛さはマグマたこ焼きに近しい存在。

「今の小太郎よりは役に立つ…喰らいつけ、そして我が命に従え‼ゾンビ共」

 そこら辺のゾンビにブートジョリキアを投げつける夏男。

「先生、何が起こるか解りませんけど…楽しい?」

「暴走…ゾンビが夏男に従い…暴走するぞ」

「フハハハ、夏男・二階堂が命じる…ゾンビどもよ、全ての屋台を破壊してしまえ‼」

 ゾンビは辛さの刺激で一時的に知能を僅かながら取り戻す…らしい(夏男談)

 簡単な命令ならば実行可能なのだ…そうだ(夏男談)


 10数体のゾンビが3台の屋台にゾロゾロと歩いて行く。

「辛さで暴走状態にあるゾンビは簡単には止められんぞ‼」


 ズシャッ…ズシャッ…

 校庭の隅から土を蹴る音がする。

「行くです…松坂さん家の闘牛ミノタウロス、凍結解除です‼ デス‼ DEATH‼」

 冬華が牛の拘束具を解いた…。


(今日もカオスだ…)

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