第76話 ねーみんぐばりゅ~

「まぁ…松坂牛でしたの?」

「うむ、松坂さん家の闘牛だからな松坂牛で間違いなかろう」

「こだわるのです」

 ビシッと牛の尻を指さす冬華

 焼き印で『松坂』と打たれている。

「先生、思うんだけど…闘牛を食べるの?」

「野性味あふれるワイルドビーフです」

「そうね…飼牛には足りないナニカがあるかもしれないわね」

「きっとGET WILDですわ」


「何も怖くはないとでも?」

 校舎の裏からヌルッと顔をだした夏男が不敵に微笑む。

「おう夏男、いつの間にやら姿を見ないと思ったら、元気そうで、まぁ…適当に良かったな」

「チッ…」

「オマエ今、舌打ちしただろ?」

 夏男が春奈を指さす。

「してませんわ」

「まぁまぁ、良かったじゃない、皆揃ったところで、これから松坂さん牛を誰が捌くか、アミダくじで決めようとしてたところよ、先生、確率は下がるに越したことは無いと思っていたの、この件に関しては」

「俺を甘く見るのも今日までだ…ダークサイドに堕ちた少年の魂のルフランを見るがいい‼ 初号機リフトオフ‼」

「なんだ…ソフ〇ンのかたまり?って」

「僕ですよ…秋季先輩」

 ガラッと紫の屋台を引いて現れた小太郎。

「あの日の僕は死んだ…アレは痛かった…痛かったぞー‼」

 叫ぶ小太郎に驚愕の秋季

「大気が震えるようだ…」

「アレが小太郎君ですの?」

「誰なの…佐藤君じゃないわよね?」

「誰かだと? とっくに御存じだろ…穏やかな心を持ちながら激しい怒りで目覚めた戦士……スーパー佐藤 小太郎だー‼」

「スーパーですか?」

 冬華がトタタタと走り出し、紫の屋台でガサゴソ漁りだす。

「コレと…コレも…あと、コレを貰うです」

 屋台から調理器具やら部品やらタコやらガスボンベなどを運び出す冬華。

「えっ…スーパーってそういう店的なものじゃなくて、移動スーパーじゃないんだけど…」

「むっ…小太郎の気が萎んだな」

「……ん? アレ…我がブラザー小太郎?…なに?この空気なに?」

「よしんば、スーパーであっても金は払えよ四宝堂‼」

「ツケとけ」

(スーパーでツケとか?)

「むっ…さらに小太郎の気が小さくなっていく」

「ブラザー小太郎…えっ? なに? 大丈夫? なんかアレ? ギリギリ? もしかしてギリギリ?」

 夏男がアタフタし始める。

「ダメですわ、見るに堪えませんわ」

「ボンベ取られたんじゃ屋台はおしまいよ…二階堂君、何度目の反抗かしら? 先生いい加減、実力行使を検討してますよ」

「何をやるつもりか知らないが…ボンベならあるぜ」

 校門から屋台を引いて現れたイケメン界のボーダーライン田中さんであった。


 今、校庭に冬華が悪ふざけた屋台が3台揃ったのである。

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