第75話 れっどうぉ~りあーず

「暴れてなければ問題ないです」

 暴れ牛は気絶している間に冬華により木に縛り付けられた。


「あの…せめてベッドに運ぶとかは無いんでしょうか?」

 気付いた小太郎の第一声であった。

 炎天下に放置されたまま、絆創膏を貼られていた小太郎の不満はごもっともである。

「ちょっと持ってなさい」

 立花先生が日傘をゾンビに渡す。

「あぅあ…うぁ」

「違うわ、この角度よ、日差しを考えて角度を変えるのよ、わかる?」

「あぇあ」

 立花先生の後方でゾンビが先生に注がれる紫外線を日傘で遮っている。

「せめて、僕に差すという考え方はできないんでしょうか?」

「えっ? この日傘は先生のよ貸せませんよ、紫外線は先生の大敵なの」

「もういいです…水を被ってきます…」

「佐藤君‼ テープマジックの絆創膏は防水タイプじゃないわよ‼」

「…どうでもいいです」


「やっすい能力だな…あの人の能力も…」

 ブツブツと文句を言いながら、水飲み場で頭から水を被る小太郎、濡れて剥がれ落ち、身体を這うように流れ足元に溜まっていく無数の絆創膏がイラッとする。

「やさぐれてきたな…小太郎、いやマイブラザー」

 校舎の影から話しかけてきた男。

 己の吐しゃ物を洗い流しに来た二階堂・ゲロ・夏男である。

「隣いいかい?」

「できれば、他所でお願いします……臭いんで、僕、貰うタイプなんで」

「ガラスのように繊細だね…特にキミの心は」

「跳ねられたそうですけど頭打ったんですか?」

 フッと笑って自分の後頭部を見せる夏男、絆創膏が貼ってある。

「医者に行った方がいいですよ…」

「ゾンビで変わってしまったことは、またゾンビで変えてしまえばいい…」

「いよいよどうしたんです? ゾンビじゃありませんよ、暴れ牛に襲われたんです…僕が赤かったから…」

「そう…キミは赤かったよ、茹でたザリガニのようにね」

「しりませんけどね」

「今度こそキミだけは幸せにしてみせるよ、シンジ…小太郎君」

「今、シンジって? 誰です? 何にかぶれたんですか?」


「コレを見たまえ…」

「ソレは…凍結中の屋台…」

「そう…神に等しき力を持ってしまった初号機だ」

「まさか…アンタ、マグマタコ焼きを?」

「そう…再び乱世だ‼ 俺と来い小太郎‼ 俺は、この初号機で世界を変える」


 ちょっと腹が立っていたので…今回は夏男サイドに付くことを決めた小太郎。

 とりあえず港で釣り糸を垂れる夏男と小太郎、タコを釣るために夜を明かしたであった。


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