第68話 りとるふらわー
「ジメジメした季節になるとゾンビが、よりゾンビらしくなるな」
秋季が窓から通学路を行き交うゾンビを眺めていた。
ランドセルを背負ったゾンビ、スーツのゾンビ、お魚咥えたドラ猫を追いかけるゾンビなどなど。
「世は今日も変わりなし‼」
ガラガラと屋台を引きながら小太郎が登校してくる、屋台の後ろから冬華がトコトコ付いてくる。
「うむ、引くのは小太郎…売るのが四宝堂…分業制度」
春奈の遥か後方で隠れながら眼鏡を掛けては外してを繰り返す夏男。
「うむ…覗きとストーキングの融合…複合変出者」
改めて生徒会室にやって来る面々を見れば、考えざるを得ない。
「なぜ我々はゾンビ化しなかったのか?」
「はい?」
「なにを今さらですわ」
「いや…私は解る、神に選ばれし者だからな」
「秋季先輩は神に反逆してるんじゃないんですか?」
「………じゃあ、魔界を統べる的なアレでゾンビ化しなかったのかもしれない」
「アレってなんですの?」
「………なんか選ばれたような感じで」
「魔界を統べる人を選ぶって…誰なんです?」
「私は魔王候補の筆頭だから…現魔王‼」
「ゾンビ化しない人が候補でしたら私もでしょうか?」
「冬華も魔王候補です」
「僕もか…魔王とか考えたことがなかったな~」
「フハハハハ、俺はすでに魔人だがな‼」
「じゃあ、魔王以下ですわね、魔人‼ ツナサンドを買ってきてくださる」
「そうか…魔人は魔王の下なのか、あっでも僕、まだ魔王じゃないからどうなんだろう」
「そうだ小太郎、貴様なぞ魔民だ‼」
「またみ? 魔の民衆で魔民だ魔人以下だ‼」
「居酒屋チェーンみたいですわ、居酒屋魔民」
「未成年の飲酒は禁止よ、佐藤君、四宝堂さん、授業よ」
立花先生が廊下の窓から顔を出す。
「先生もライバルということか…やれやれ」
「何を言ってるの一ノ瀬君? 5年生やるつもり? 先生、アナタの面倒をみれませんよ手遅れです」
「ハハハ、コレは手厳しい」
「ミーティングは終わりよ、続きは放課後になさい、各自、教室へ移動‼」
(あぁ…今日も1日が始まる)
変わった世界の変わらない日常なのである。
『外伝 今日の田中さん』
「チョコたい焼きは売れない…」
あれから3週間、田中さんは気づいたのだ。
「コレはミスマッチだ…」
色々、考えた。
普通に、たい焼きじゃダメなのかと。
だが、腹立つくらい大きく書かれた『チョコ』の文字、汚ぇ字で書かれた文字がまた腹が立つ。
「そもそもゾンビが買っていくのが不思議で仕方ない」
どうしたものか?
リピーターが付かない『チョコたい焼き』を売り逃げるように屋台を引く田中さんであった。
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