第67話 ふぉうりーずん

「ピンクウィークの1週間、裸で登校し続けたそうです」

 小太郎が秋季に報告した。

「ほほう…それで風邪をひいたと…かける言葉も見当たらないな」

「そんなもの最初からありませんのよ…」

「手が止まってます‼」

 校庭で屋台参号機を制作している面々。

「お好み焼きで勝負をかけるです‼ シーフードお好みイカ墨MIXです‼」

「えっ? ミックス? ヤバ…MAXって書いちゃたよ僕」

「……マックス…アリです‼」

 結果オーライであった。

「しかし、四宝堂くん…なぜイカ墨を、わざわざミックスしちゃうんだ?」

「参号機は黒です‼」

「汎用人型決戦兵器のことですわね」

「……浸食されるんですよね?」

「………」

 どうも一言多い小太郎であった。


「前から聞きたいなと思ってたんですが」

 黒いペンキを塗っていた小太郎が春奈に尋ねた。

「なにかしら?」

「春奈先輩の能力って、なんか限定的というか、局地的というか…実用的なんだけど、不思議な能力だなって…」

 平たく言えば、なんでそんな能力になっちゃったんですか?と聞きたいのだ。

「いえ…秋季先輩は中二病じゃないですか、二階堂さんは欲望のまま…冬華のは趣味というか思い込みというか、僕のはそのまま、お金が絡んでます、立花先生のは保健医らしいですしね」

「そうね~、あの日…目が覚めたら真っ暗でしたのよ……」


『春奈のゾンビが蔓延した夜明け編』

 まだ薄暗い時間、ゴソゴソ…ガサガサと騒がしい廊下の異変で目を覚ました春奈。

 電気をつけようとしたがブレーカーが落ちているようで電気はつかなかった。

「困りましたわ」

 そこで、寝室の壁にかけてある懐中電灯に気づいた。

「でもね、懐中電灯って肝心な時に付かないでしょ?」

 そうなのだ、滅多に使わないまま電池が切れて、肝心な時に使えない…それが懐中電灯というものなのだ。

「そこで、部屋中を探しましたの単二電池…でもね、単一、単三…単四は替えがありますでしょ、だけど単二って備蓄がありませんのよ」

「確かに…単二って使い切る分しかないかもしれない」

「そうですの、それでね、あぁ新品に戻ればいいのにって思いましたの、単二電池を握ってね」

「はい…」

「そうしましたら、できましたのよ、入れなおしたら付きましたの懐中電灯が」

「そうなんですか」

「そうですのよ」


『春奈のゾンビが蔓延した夜明け編』完


「できましたですか?」

「明日にはペンキも乾くよ、今日はここまでだね」

「うむ、シンナーの匂いが抜けたらオープンだな」


 その夜から土砂降りの雨が降りました。

「梅雨入りですわね」

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