第66話 ろんぐほりでー

「せっかく顔は良かったのに…中身が残念な人だったわ」

 立花先生は、田中が校長でもいいと思っていた。

 理由は顔が良かったから、それだけだ。

「俺の視界にイケメンなど入ってはならん…奴には旅に出てもらう」

 それが本音の夏男。

 秋季の全ポイントをビジュアルに振った中性的な容姿は、致し方ない…もう勝ち負けじゃない。

 小太郎のように影の薄い顔は容認した、だが…普通のイケメンは一番困る存在になる。

「自分以外の男は全てガラパゴス諸島でコモドドラゴンに喰われてしまえばいい」

 本気でそう思っているのだ。

 ただし…デブスだけは奴隷として生きていくことを許そうという、寛大な心も持ち合わせている。

 歪んだ欲望を前面に押し出した容姿は中ボス程度の威厳を醸し出している。

「さて…諸君、覚えているよね」

「なにかしら?」

 立花先生が真顔で聞き返す。

「おやおやおやおや~、教師が生徒との約束を反故にしようということですかー‼」

「約束か、確かに我々は負けたのかもしれない…だが見ようによっては、ただココでチョコたい焼きを焼いてただけ、つまり戦ってすらいないとも言えるのではないか?」

「じゃあ不戦敗じゃないですか」

 ボソッと小太郎が余計なことを口走る。

「よく言った‼ 我が右腕よ‼」

 もはや本件に関して春奈は言い訳の一つも思いつかない。

「フハハハハ、明日から楽しみだー‼ 今日は、眼鏡を新調するのでな、コレで失礼するよ、あぁそうそう…どうせなら裸で登校してみてはどうかな? 我が能力スケルトン・マインドの前では着衣など意味を成さないのだから、フハハハ」

「恐るべし…スケルトン・マインド」

 秋季がゴクリと唾を飲み込んだ。

(この人は、無関係だけど裸で登校してきそうだな…)

「繰り返すが…病欠は認めないぞ、存分に辱めてやるわーピンクウィークばんざーい‼長期休暇ばんざーい‼」

(ハッ‼?)

 春奈の種子が弾けた‼

「受けて立ちましてよ‼」

「覚悟を決めたか‼ この露出狂がー‼ フハハハハ、では明日、また会おう」

 夏男は去っていった。

「愚かですわ」

 ほくそ笑む春奈。

(コッチはコッチで怖ぇな)


 ………

 ピンクウィーク初日、誰も登校しなかった。

 大型連休なのだから…

 1週間、誰も家から1歩も出なかったという。


「ぬかったわ…」

 独り裸で登校した夏男以外は…

(思考が透けているんじゃないだろうか?)

 スケルトン・マインドとはよく言ったものだ…小太郎は月を眺めていた。

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