第62話 ふぁんたじーふぃ~るど
「おはようです」
「四宝堂さん…アレはダメよ」
翌朝、立花先生は生徒会室で紅茶を飲んで冬華の登校を待っていたのだ。
「アレ?」
「ブラックタコ焼きよ、ムワッと見えないタコがレンジから襲い掛かってくる感じだったわ」
「食べたですか?」
「1個だけよ、1個で数匹分のタコのダメな部分が凝縮されていたわ」
「冬華、タコ焼き飽きたので、たい焼きすることにしたです、チョコ味の」
「ほとんどワッフルね」
「屋台の定番を適当に攻めていきたいんです」
「アグレッシブな姿勢は先生好きよ、でもね行き過ぎると置いて行かれてしまう物もあることを知って欲しいの…タコ焼きのことよ」
「あぁ~」
「タコ焼きの大事な部分を置き去りにしないでほしかったわ」
「ワッフルはそうならないようにするです」
「たい焼きじゃなかったの? もうすでに置いてってない? 始める前から置き去りにしていない? 先生、四宝堂さんのそういうところ心配よ」
立花先生の心配を他所に、仕込みは始まっていた。
「タコ焼きに飽きたら、たい焼きか…その男が甘党だといいのだがな」
「そうですわね~、まぁでも買い物くらいはするのでしょうから、スーパーで待っているというのは良い案ですわ」
「冬華が、そこまで考えているとは思えませんけどね」
「結果オーライだ、会っても見過ごしてしまう夏男のようなことにはなるまいよ」
「俺が悪いみたいに聞こえるぜ‼」
「まぁ、そうは言ってませんのよ…ただ頭が悪いと申しただけですわ」
「フッ…そこまで言われたら俺も黙っちゃいられないぜ‼ 俺が、その男を見つけたりゃぁぁ‼」
「やっと男を探す気になったのか夏男よ、テキトーに頑張れよ」
「協力は致しませんけどね」
「上等だ‼ 行くぞ小太郎‼」
「えっ?」
「俺達が先に見つけてやるぜ‼ コレは勝負だからな‼ 俺が勝ったら…」
「ほう勝負…面白い、勝ったら?」
「1週間‼ 眼鏡を掛けっぱなしで過ごさせてもらう‼ 誰にも邪魔はさせんぞ‼ もちろん不登校も許さん‼」
「まぁ随分、傲慢ですこと…息の根を止めてくれやがりましょうか」
「なんだとー‼ 俺が勝ったら春奈、貴様を穴が開くほど隅々まで見まくってやる‼」
言葉の語気こそ強いものの、表情がニタニタしている夏男に寒気を感じる春奈であった。
「夏男の、あの自信…どこから来るのか?」
「まさか、心当たりがあるのでは?」
「可能性は否定できんな」
「冬華のチョコたい焼き、失敗です…」
「う~む、甘い物には反応が薄いのかもしれん」
「先生は好きよチョコたい焼き」
待ち一辺倒の春奈チーム、初手は躓いた。
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