第60話 だんすうぃずみー
「冬ちゃん…」
タコに顔面を侵食されながらも、冬華の後を付いていく夏男。
ただでさえ足の速い冬華、タコに絡まれながら後を追いかけることは困難を極めた。
そして…あっという間に置いていかれた夏男。
「んごっ…」
タコの足が夏男の口に入って来る。
(コイツ…俺の身体を乗っ取るすもりか?)
にわかにタコは宇宙人説を信じたくなる夏男。
タコと格闘しながらスーパーへ向かう夏男。
(しかし…このタコ‼)
油断すると窒息しそうになる。
(狙っているのか?)
タコが自分を殺そうとしているように思えてきた夏男。
街でタコに殺される…そんな死に方した奴が未だかつていただろうか?いやおるまい。
あるいは海中ならば、いただろう、だが住宅街で、タコに窒息させられた…そんな奴がいるのか?
(いそうです…そう俺…)
すでに意識が遠くなっている夏男。
(なんかヤバイ…タコを侮った…)
「さよなら…俺、顔面がタコと一体化したゾンビになります」
ベリッ…ビチチチチ…
顔から強力なパックを剥がすように夏男の顔からタコが剥がされる。
「キミ、大丈夫か?」
「ん? ふっ…お迎えくらい女の天使が良かったぜ」
「頭を打ったのか?」
「……この生臭さ…俺、生きてる?」
「あぁ…そのようだが…なぜキミはタコを張り付けて寝ていたんだ?」
「あぁ、そのタコは恋人から預かったタコだ、とりあえず返してもらおうか、そして…助けてくれてありがとう」
「あ…あぁ…コレな…うん返すよ」
見知らぬ男は夏男にタコを手渡した。
「まぁ大丈夫なようだし…僕は行くよ」
「もう一度、礼を言うよ、ありがとう、アナタがいなければ、俺はタコゾンビとして、アイツらに笑われていたでしょう」
「まぁ、2度は無いと思うが、気をつけるといい」
「タコに顔を乗っ取られないように気をつけます」
………
「ということがあってな、フハハハハ…危ない所でしたよ」
まな板でタコの足をブツンッ…ブツンッと包丁で切っている夏男。
「このタコのせいで死にかけたんだ俺は‼」
「いや…夏男よ、オマエの生き死には問題じゃないんだ…オマエ、その男が小太郎が探している男だとは思わなかったのか?」
「………秋季よ、俺は、あのとき死にかけたんだぞ、鼻から足を突っ込まれ、口に侵入してくるタコ、オマエそんな状況に遭ったことあんのか‼」
「無いが…それがどうした」
「そんな状況下で命を救われた俺に、そんなことを考える余裕があったと思うか‼」
「夏男よ、オマエ、しっかり会話してるんだろ、途中で気づくだろ普通」
「そんな男より、俺が死にかけたことに興味を持て‼ いや…持ってください‼」
(コイツはダメだ…)
秋季は小太郎に向かって首を横に振った。
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