第56話 うぇいとこんとろ~る

「どうせ、僕をデブまっしぐらに誘導しているのでしょう?」

「はい」

「なんの意味があるんでしょう?」

「デブは俺よりモテないと思うからです」

「僕がデブになったら、二階堂さんがモテるようになるんでしょうか?」

「いいえ、だけど自分以下の人間を見ていると優越感に浸れるだけです」

「アンタ最低だな…」

「貴様は、俺以下になるんだ‼」

 タコ焼きのタコ抜きを投げつけてくる夏男。

「熱っ‼ タコ焼き熱っ‼ いや、タコ焼き、じゃないか…小麦粉熱っ‼」

「フハハハ、小太郎よ、俺以下になれ‼ 俺に人を見下すという権利を与えろー‼」

 次々とタコ焼きのタコ抜きを投げつけてくる夏男。

(クソっ身体が重い…思うように避けられない)

 急激な体重の増加、小太郎の身体能力は落ちていた。

 ベチャッ…ベチャッとタコ焼きのタコ抜きが身体にヒットする。


 アガアガ…屋台にひょっこり顔を出してタコ焼きのタコ抜きを、つまみ食いする冬華。

 ブスッ…

「アガーっ‼」

 夏男が悲鳴を上げる。

 痛みが走った足を見てみると、しゃがんだ冬華が夏男の足の甲に、タコ焼き串を突き刺していた。

「何するの‼ 冬ちゃん…」

「タコがはいってなかった…詐欺は死刑です‼」

「俺、死ぬの?」

 コクリと無表情のまま、うなずく冬華。

「そっか…死ぬのか…どうやって?」

「……これから考える、どうやったらゾンビにならないで死ねるか…立花先生に相談します‼」

「簡単ですわ、細切れにしてしまえばいいのですわよ」

 タコ焼きのタコ抜きを、ひとつ食べながら春奈がスラッと日本刀を抜いた。

「丁度、家にございましたのよ…偶然、持ち合わせていて良かったですわ」

(偶然、持ち合わせてたんだ…へぇ~…日本刀を?)

「覚悟なさいませ‼」


 夏男は逃げました。

 そう…自己最高の速度で、全力を超えた全力で‼

 ドンッ‼

「はうっ‼」

 そして交差点で車に跳ねられました、夏男の信号無視です。

「あぅあ…あぅあー」

 車からゾンビが降りてきて、夏男を揺すって…

「あぅ…あ」

 そのまま走り去って行きました。


「小太郎くんも、アレくらい全力で走れば、すぐ痩せますわよ」

「……はい」


 小太郎は全力でダイエットに取り組みました。

 2週間で体重は戻り、体脂肪も減りました。


「いや~死ぬかと思ったね実際」

 跳ねられた夏男が元気になる頃、あの屋台を生徒会室へ持ち込んだ冬華が、タコ焼きにハマっていました。

「タコは毎朝、釣っています、新鮮です」

「ハハハ、タコが入ってこそのタコ焼き」


 海岸では数人のゾンビが釣竿を垂れて冬華のために頑張っているという…。


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