第54話 すたんどばいみ~

「撃つな‼」

 ボーガンを構えた春奈を秋季が止めた。

「大丈夫だ…敵意は無い」

「そんな一ノ瀬くん、風の谷のお姫様みたいなこと言ってもダメよ、先生、それが何であれ、仕留めるべきと思いますよ」

 冬華隊長、想定より巨大だったツチノコが虫かごに入りそうにないことで、アワアワして代わりになるものを探している。

「なんか、地味に怖いんですけど…」

 足を噛まれたままの小太郎は青ざめている。

「グガッ…ゴゥ…ダブ…ダビデデ…」

「なんか鳴いてますけどー‼」

「よく聞け、小太郎‼ 耳を傾けるんだ、王蟲を理解しろ‼」

「王蟲なんですかコレ?」

「まぁ、目は何色? 赤かったら危険ですわ」

「小太郎?」

「目とか解りませんけどー‼」

「佐藤くん、面倒だからナイフでザクッとやっちゃいなさい‼」

「ナイフ…どっかにいきました…」

「ではワタシが…」

 足で草を掻き分けて、ボーガンを構えたまま前進する春奈。

 胴体と思われる個所を思いっきり踏みつけ、頭部であろう個所に狙いを定める。

「ん? おや? まぁ…でもシュート‼ですわ」

 何秒か考えてボーガンを撃った春奈…

「外しましたわ…残念」

「残念じゃねぇ‼」

 聞き覚えある声がツチノコから…

「二階堂さんでしたわ…」

「オマエ俺だと確認してから撃ったよな?」

「……はい?」


 ツチノコは二階堂 夏男…その人だった。

「冬華、ツチノコがよかったです…」

 手を縛られたまま、草むらを散策中、泥沼にハマった夏男、泥水啜って、ようやく脱出したが、上手く立ち上がれずに、もがいて這っていたところ、小太郎の足を掴んで助けを求めたのだ。

グガッ小太ゴゥダブたすダビデデたすけて…」

「仕方ないわ…茶色い身体、這いずる生き物…謎の鳴き声…ツチノコと間違われて撃たれてもね、二階堂くん‼」

「間違われてねぇ…春奈は俺と目が合ったんだ‼ アイツは俺だと認識したうえでシュートしてきたんだ‼」

「まぁ…今となっては、どうでもいいことですわ、チッ‼」

 綺麗な顔をしかめて舌打ちする春奈

「なんだ、その残念そうな顔はー‼」

「残念です…ツチノコだったら良かったのに…こんなのいらないです…」

 バシバシッと夏男を枝で叩く冬華

「ハハハ…コレも愛のカタチかもしれないよな? 小太郎」

「そう思いたければ、それでいいんじゃないでしょうか」


 わだかまりを残しつつ、ハイキングだか、キャンプだか登山だか解らないGWの2日間、下山してタクシーで学校まで帰ることにしました。


「違う、右…みーぎ…そう、お箸持つ方へ曲がるの‼」

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