第53話 ふぁうんどいっと

「おー牧場は緑~、よく茂ったものだホイッ♪」

 ガンッ‼

 両手を縛られ小太郎に引っ張られている夏男、呑気に歌いハイキングを楽しんでいると先頭を歩く冬華に石を投げつけられた。

「未来の我が妻は気丈だ、フハハハ」

(丈夫な人だよな…実際)

「ぜんた~い止まれ‼」

 ピッ、ピッ、ピーッ‼

 ザッ、ザッ、ザシッ…ザムッ…

 冬華の笛で3歩で止まれなかった夏男

 ツカツカ夏男の前にやってきた冬華、しなりのいい枝でパーンッと夏男の太ももを引っぱたく。

「痛っ‼」

「次に止まれなかったら足を、ぶった切る‼」

 小さな鬼軍曹、サージェント冬華、部隊の統率力は高そうだ。


「冬華…どうしたの?」

 小太郎の言葉に無反応な冬華

「……四宝堂隊長…どうしましたか?」

 言い方を変えてみた小太郎。

 ビシッと、しなりのいい枝で指さした野原。

(あの枝、気に入ったんだな)

「各自、散開してツチノコを捜索開始‼」

「えっ?」

「開始‼」


 原っぱで、存在が限りなく危ういヘビを探すこと2時間。

「集合‼ 各員、状況報告‼」

「うむ…一ノ瀬、トカゲ2匹を捕獲」

「ワタシ、三宮寺…バッタ1匹を捕獲」

「佐藤…シマヘビ1匹捕獲」

「立花…特に捕獲してません」

「うん? 二階堂は? 二階堂捕虜はいずこか?」

(捕虜だったんだ)

 冬華が辺りを見回すが夏男の姿が見えない。

「……どうでもよし‼ ただし逃亡者は発見次第、速やかに再捕獲、重罰に処すから、ツチノコのついでに探すこと‼ 引き続き捜索開始‼」

 捕まえた青大将を引きずりながら草むらに消える、ちっこい隊長。


 ゴソッ…ガササッ…何やら、巨大な物が草むらを這いずる音がする。

 大きく草が揺れている。

「ツチノコだ‼ 周囲を囲んで中心に追い詰めるように‼」

 5人が集まって来る。

 指で、オマエが飛び掛かれと冬華が小太郎に指示する。

(ツチノコって…毒あったんじゃないかな?)

 首を横に振る小太郎。

 ソレを許さない他4名。

(毒で死んだら…毒持ったゾンビになるのかな~)

 そっと中心でゴソゴソ動く謎の巨大生物の周囲からククリナイフで草を刈りながら距離を詰めていく小太郎。

 近づくと解る…

(デカいな…ツチノコってデカいんだっけ?)

 茶色の身体が小太郎の目の前でゴソッと動いた。

「ホントにいたー‼」

 逃げる小太郎、足をグイッと引っ張られて草むらに顔から倒れた。

「噛まれたー‼ ……痛くないけど…噛まれたー‼ 飲まれるー‼」

 緊張が走る原っぱ。

 春奈がボーガンを構えた。

「いや‼ 私が行こう…ゴッドイーター‼」

 秋季の手に禍々しい剣が現れる。

「それ一番役に立たないやつー‼」


「成敗‼」

 ポクッ……

 どうやら相手は闇属性であることは音で解った。

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