第47話 うぉーきんぐでっど

 適当に流し読みしながら回された『旅のしおり』

 小太郎が目を通すと気になる単語が嫌でも目に付く。

『ツチノコ』『ミステリーサークル』『キャンプファイヤー』『マイムマイム』…

 ビックリするくらい、非日常の間に非現実が取り込まれている。

「聞きたいのですが夏男さん」

「なんだ小太郎」

「このツチノコというのは?」

「UMAだ‼」

(あぁ…やっぱり、あのツチノコなんだ)

「では…ミステリーサークルとは?」

「UFO着陸の痕跡だ‼」

「あの山にあるんですか?」

「オマエ…アソコに無ければ何処にあるというんだ‼ 日本にはなぁ、小麦農園なんかねぇんだよ‼」

「ないことはないのでは?」

 グイッと小太郎の胸ぐらを掴むハイキンガー夏男がギロッと凄む。

「じゃあ、お前の知ってる小麦畑までハイキングするか? それはもはやヒッチハイクじゃないのか?」

 面倒くさいくなるので小太郎は大人の対応で退いた。


 学校から出発して1時間…

「もうダメ…小太郎…タクシー」

 ハイキンガーまさかの脱落宣言。

「アンタが歩くって…」

「もう無理、見て…こんなに歩いたのに山、近づいた気がしない」

「爺やに迎えに来てもらいましょうか?」

「ダメ…それじゃドライブじゃん…」

(ホントに面倒くせぇ…)

「だから小太郎、タクシー‼」


 無事タクシーを拾えた一行、2台に分かれて山を目指す。

「解ります? やーま、あのやまへいくの」

「あぅあ…あう、ああぅあう?」

 ゾンビドライバーに目的地を伝えるのは困難を極めた。

「いや違う、みーぎ、みぎ…お箸持つほう」

「あぅあ…あえ?」

 なんとか目的に着いた頃には、日が沈みかけていた。

「徒歩も…タクシーも疲れましたわね」

「先生、途中でUターンを2度考えたわよ」

「くぁーっ」

 冬華が大きくアクビする。

 今日は文句を言わない冬華、意外にも服装は探検隊で虫かごと網を持参している。

(ツチノコ捕まえる気なのだろうか…)


「酔った…車に酔った…オエッ…」

(大人しいと思ったら…コレだよ)

「で…夏男よ、私たちはこれからどうなるのだろう?」

「カ…カレーを…」

「えっ?」

「まさかキャンプするつもりでしたの?」

「ハイキングからキャンプ…そして登山…」

(フルセットだな…)


「ハイキングの時点でグダグダですから…もういいんじゃないですかね」

「貴様ー‼ 修正してやる‼」

 青白い顔の夏男が小太郎に殴りかかる。

 ドムッ…

 冬華の拳が夏男の胃を直撃し…うずくまり、吐き出す夏男。

「冬華、明日は隊長します‼ ツチノコ捕まえます‼」


 まさかの下剋上から、カレー作りが始まったのであった。

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