第46話 ごーるでんうぃ~く

「ゴールデンウィークはどうするんだい? エビバディ?」

 夏男が皆に尋ねた。

「いや…特に何もしませんけど…」

「ワタシは…まぁ家でゆっくり…」

「………」冬華ガン無視

「私は、新しい椅子を買いに行くぞ」

「つまり…大した用事はないということだな‼」

 皆は夏男と視線を合わせようとしなかった。

 なぜなら、夏男はハイキングの格好をして登校してきたからだ。

「ハイキングだ‼ 丘を越え行くのだ、口笛吹きつつ、もちろんカレイド高校校歌のな‼」

「冬華、歌詞覚えてないです、まったく‼」

 作詞担当、まさかの発言である。

「昼ご飯はサンドウィッチ派? おにぎり派?」

 他人の言葉など耳に入ってこない夏男。

「いや…とくに…何派とか考えたことないです」

「そっか、両方あっていいよね」

 もうウッキウキである。

(止めらんないな…コレ…)


 ………

「はい、おはようございま~す」

 夏男が校門の前でリュックを背負って、いつもの面々を迎えている。

 そう今日はGW初日。

 結局、押し切られてハイキングに行くことになったのだ。

 夏男のテンションと反比例して面々のテンションは駄々滑りしていく…。

「先生、引率とか頼まれたけど、正直、ココで解散してもいいくらい行きたくないわよ」

 立花先生など、スカートにパンプス、白衣である。

 やる気の無さが駄々洩れである。

「そもそも、何も用意してないわよ、手ぶらです」

「手ブラでもノーブラでも構いません、俺は皆でアウトドアを満喫したいんです、そのうえノーブラなら俺は…俺はもう‼」

 うなぎのぼりのテンションを先頭に無言で続く生徒会の面々と引率。

「桜が咲くと訪れる♪出会いと別れの並木道♪」

 夏男が大きな声で街を練り歩く。

「こんにちわー」

 すれ違うゾンビに挨拶する夏男にイラッとする。

(登山気分か?)

「夏男…聞きたいのだが?」

「なんだ?」

「どこに向かっているのだ?」

「おいおい、勘弁してくれよ~決まっているだろ…山だ」

 ビシッと遠くの山を指さす夏男。

「冗談ですわよね?」

「本気だ」

「徒歩でいくんですの?」

「ハイキングで車乗る気か‼」

「せめて山のふもとまではバスでもいいんじゃないでしょうか?」

「そうですわ、なんなら爺やに頼みましてよ」

「お前等はバカか‼」

「んまっ? バカとは失礼ですわ」

「山まで車で、山からと歩く? それじゃ登山じゃねぇか‼ 今日はハイキングなの‼」

「ん…今日は?」

「明日が登山だ‼」

「はい?」

 ペラッとポケットから紙を取り出す夏男。

「冬ちゃん、全員に回して」

 紙には『旅のしおり』と書かれていた。


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