第45話 そうるふるそんぐ

 冬華の歌詞を夏男に3日が過ぎ、4日目の朝。

「…できたぜ…」

「ん? なにが?」

 秋季が、やつれたアマデウス・二階堂に、まさかの言葉を投げかける。

 もう、なんとなく満足したのだ、かれこれ1か月が過ぎたので興味が薄れたというか忘れたというか。

「校歌でしょうが‼ アンタが依頼したんでしょうが‼」

「なるほど…そのようなこともあったかもしれないな、私としたことが、ハハハ」

「音楽室へ集合じゃぁー‼」


「なんなんですか、いきなり音楽室とか?」

「ホント、朝からくる場所じゃありませんわよ、見て、合唱部の方々が驚いてますわ」

 朝練中と思われる合唱部ゾンビが部屋の隅で「あうぁう」と怯えている。

 アマデウスの気迫のせいである。

「冬華…眠いです」

 目を擦りながら音楽室の椅子に座る冬華。

「校歌を作ったとか、先生、初耳ですけど?」

 立花先生も呼んだようだ。

「揃ったな、では…始めるとするか、カレイド高校校歌、模範斉唱、始めます‼」

 夏男がピアノの前で恭しくお辞儀して座る。

 ……ギュイーィイィン‼

 パソコンから大音量のエレキギターの音が炸裂する。

(まさかのエレキギターから入る校歌って…)

 伴奏しながら夏男は4番まで歌い上げた。

「まぁ…アレだな…斬新な校歌に仕上がったな…」

「随分とアップビートな校歌ですわね」

「ギターの自己主張が凄いですね、ソロパートがありましたもんね」

「冬華、うるさくてイライラした…」


 立花先生がスクッと立ち上がって一言

「総じて不評‼」

「どこらへんが?」

「全体的にガチャガチャしているとこ、色々とイラッとする部分が定期的に挟み込まれるんだけど、最後のピアノを弾き終えた二階堂君の顔が不評の8割を占めるわ」

「俺の…俺の…エクスタシーが?」

「えぇ、その悦に浸った顔、先生、引き裂きたい衝動に駆られたわ」

「それは、つまり…夏男が伴奏しなければ問題ないということなのだろうか?」

「抜本的な解決策ですわ」

「ついでにエレキギターを排除すればいいのでは?」

「冬華、静かな方がいいです、とくに4番は」


「俺の努力は?」

「大丈夫だ、ピアノの伴奏だけ録音してしまえば問題ないぞ夏男」


 そういうわけで、とりえず家令土高校校歌(仮)が完成した。

「いつ…いつ歌うんだ、俺の校歌」

「そうだな…覚える気にはなれないから、オマエが気の向いたときに歌えばいいと思うぞ」


「努力…努力したんだ…俺…うわっ…うわぁぁあーん‼」


 走り出した夏男、放課後に校庭の壇上でギターをかき鳴らして校歌を熱唱していた。


「ほぅ…ビブラートが、かかっているな」

「泣いてるんですよ…」

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