第44話 わんしーずん

「3番‼」

 ふんふんっと鼻息が荒い冬華

『枯葉が溜まれば火を放つ 芋でも栗でも焼けばいい 雰囲気だけで焼いてはみても 苦労に見合わぬクオリティ 生焼けた芋の固さを感じ 熱いだけの栗に立腹 あぁイメージ先行 アニメの食材真似してみても 焼却炉の脇 家令土高校』 

「焼却炉の脇? 着眼点が限定的だな」

「いよいよ英単語が混ざりだしましたね」

「インターナショナルですわね」


「4番‼」

『雪が積もれば気が滅入る 犬でも庭など出やしない 雪で、はしゃぐの子供だけ

 雪で愉しむ余裕がねぇ スキーにスノボやる気もねぇ 寒い外に出る奴クレイジー あぁ白い世界は この世に湧いたコキュートス 出ることもねぇ屋上の意味 家令土高校』

「ついに地獄が湧いてきたな」

「冬を全否定してきましたね」

「ないないばかりでキリがありませんわ」


「終わり‼」

 冬香がパンッと校歌(仮)が書かれた紙を折って、ココアを飲み始める。

 無表情ではあるが、やり切った感が溢れ出ている。

「………さて…問題はアッチのほうか」

 秋季が扇子で音楽室の方を指す。

「えっ?」

「どうした小太郎?」

「歌詞はアレで?」

「問題なかろう、全シーズンを網羅していたし」

「春夏秋冬のネガティブな面が、よく表されていましたわ」

「春奈先輩…校歌なんですよ」

「今年はコレでいいんじゃないか?」

「毎年、変える気ですか?」

「来年は自分で作ろうと思ってな」

「あらっ、来年も留年する気ですの?」

「むっ…その場合、私は超級生から何になるのだろう?」

「とりあえず、僕と同級生になりますね」

「会長の座を争うことになりそうだな小太郎」

 不敵に微笑む秋季

「それでいいんですか? 僕は辞退しますけど」

「それはそうと小太郎、その歌詞を夏男に渡してきてくれ」

「えっ?」

「どうしましたの?」

「いや…わかりました」

 小太郎は思った、面倒くさいことになりそうだな~と…


「渡してくれたまえ」

 夏男は、心なしか少し、やつれていた。

「はい…では」

「待ちたまえ、小太郎くん」

「はい?」

「冬香くんに伝えてくれるか」

「はい」

「キミの気持ち、確かに受け取ったと…このアマデウス・二階堂、この歌詞を昇華させてみせるとね」

「はい、言葉のまま伝えます」

「3日だ‼ 3日で完成させると秋季に伝えてくれたまえ」

「はい、伝えます3日後完成だと」

「頼んだぞ」

「はい」


 ……

「だそうです」

「まぁ、バンバン叩いているだけではなかったのでしょうか?」

「ベースはできてるんじゃないか」

「読めないから解りませんけど、楽譜的な紙は、とっ散らかってましたよ」

 小太郎がピザを食べながら聞いたまま伝えた。

「冬華、どうでもいいです‼」


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