第36話 れいんどろっぷ
「なんで迎えに来てくれないんだよ~」
泣きながら生徒会室に入ってきた夏男。
「なにがあったの?」
連れてきた立花先生が秋季に尋ねる。
「ん? どうしたというのだ?」
「それを先生は尋ねてるようですわ」
「なにがあったか…さて、なにかあったのか…」
「何もなければ、聞きはしないわ」
しばし考え…秋季は答えた。
「何もないな」
「あっただろ‼ 生徒会メンバーが何日も無断で欠席してたでしょうが‼」
夏男がキレだす。
「……正月以来だな夏男…気にしていたぞ」
「嘘つけ‼」
「あらっ、本当ですわよ」
「ホント? 春奈は俺のことを思ってくれてたわけ?」
「えぇ、性的な犯罪をしているのではないかと気にしておりましたわ、私に関わらなければ、問題ありませんけど」
「犯罪…性犯罪…そんなことを俺がするわけねぇだろ‼」
「いえ、この近辺でそういうことがあったら、真っ先に疑いますよ僕は」
冬華が甘酒を持って走ってきた、そして躓き、夏男の顔にぶち撒ける。
「熱っ‼ ヌメッと熱い‼…そして痛い」
(わざとなんじゃないだろうか)
ペコッと無言で夏男に頭を下げて、再び甘酒を取りに走る冬華。
無駄に広い生徒会室をチョコマカと忙しなく走っている。
色んな物を持ちながら…
(大掃除…じゃないだろうな…1月に)
一人で慌ただしい冬華、観葉植物の配置で悩んでいるようだ。
(夏と冬じゃ日の角度がね…)
「小太郎、オマエ、俺に興味ねぇだろ?」
「……はい」
秋季と春奈の顔を順番に見た夏男
「どうやら世界は俺に興味が無い‼」
「そんなことないわ‼ 二階堂君、先生は…」
「先生は?」
「先生は…まぁ…興味はないわ‼」
「やっぱりね‼」
「夏男、だから引き籠っても大丈夫だから…安心して引き籠っていいんだぞ」
「できれば死んでも部屋から出ないで頂きたいですわ」
「ゾンビの引き籠りって、生き返った意味ねぇだろ‼」
「それはもう、生きてる今も、その意味が無いってことなんじゃないですか」
「………俺の存在って?」
目に涙が溜まっている夏男
「時に夏男、オマエ、引き籠って何をしてたんだ? え~と何日くらい登校しなかったのか知らないが」
「……恋愛を…色々な世代の愛の形を…その…視聴していたというか」
「まぁ恋愛映画を観てましたのね」
「映画というか…まぁ…ジャンルで言えばドキュメンタリーだったり、ファンタジーだったりなんだけど、映画ではないかもしれない」
「何を観てたんですか? タイトルは?」
「タイトル…俺のオキニの?」
「恋愛映画なら私も好きですわ、知っていると思いますの」
せっかく皆に興味をもってもらったのに、タイトルで再び無視されることになった夏男であった。
(五十路セーラー服…なんだって?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます