第26話 すの~まん
「ところで書記…昨日は何か変わったことはなかったか?」
秋季が冬華に尋ねた。
「昨日……特に何もありません‼」
「えっ?」
小太郎が思わず声を上げる。
「何も?」
「はい‼ あっ…コレ出ました‼」
ガシャポンの猫フィギュアをポケットから取り出す。
「まぁ可愛い」
「シークレットです‼」
(猫のフィギュア以下の出来事なんだな…)
「うむ、何も無ければそれでよし」
秋季が扇子をパチンと閉じた。
「いいわけねぇだろぅがー‼」
生徒会室でミイラ男が吠える。
「何が?」
秋季がミイラ男に尋ねる。
「何も無かったことにならねぇからな‼」
「二階堂さん、自業自得です」
「変態は罪ですわ、死罪ですのよ」
「一択? 俺死罪なの?」
ミイラ男が動揺する。
「ストーカーの時点で、言い訳御無用だったんだが…ストローを舐めた時点で確定した、すまんな夏男」
「死ねってこと? 奇跡の生還の翌日に死罪を突き付けてくるの? どういうルール?」
「変態には死をというルールですわ」
「ハムラビ法典超え? 俺の性癖は死に値するの?」
「性癖ではありませんわ、存在が死に値しますのよ」
「存在が?」
ゾンビが蔓延る世界で存在が死だと断言されたミイラ男、どう受け止めていいのか…。
(どっちも死人なのに、さらに死を突き付けられるとは…救いようがない…クリスマスなのにな~)
「ところで会計よ、今夜はどうするんだ?」
「えっ?」
「あらっ? クリスマスじゃないの、今夜はウチでパーティしますのよ」
「そうなんですか?」
小太郎の脳裏にゾンビがチキンを貪る光景が浮かんだ。
「会計も参加するものだと思っていたが」
「もちろんですわ、今年は冬華ちゃんと小太郎君も招待しますわ、はいクリスマスカード」
春奈がカードを差し出す。
「冬華、パーティ行きます‼」
放課後…春奈の実家は、とてつもない金持ちであった。
「お嬢様だったんですね…春奈先輩」
「そんなことありませんわ、庶民のやや上、程度ですわよ」
(庶民って…)
メイドゾンビと執事ゾンビが数人ウロウロしている和風庭園を抜けるとドーンッとお屋敷がそびえ立つ。
家に竹藪とか…
広々とした和室でクリスマスパーティ…なんだか違和感もあるのだが、冷凍食品のオンパレードとはいえ、楽しいパーティであった。
(家に滝とかあるんだ…高級旅館みたいだな)
春奈の、あの物事に動じない性格は、こういう環境に産まれた者だけが持つ度量の大きさなのかもしれないと小太郎がシャンメリーを飲みながら廊下に出ると…
フハーッ…フハーッ…
窓を曇らせる鼻息の向こうにミイラ男がへばり付いていた。
「二階堂さん…」
「おっ夏男ではないか…なぜ外に?」
しばらく誰も気づかなかったが…夏男だけ呼ばれてなかったのだ。
立花先生も呼ばれていたのに…。
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