第25話 すかいはい
「昇る気だなアレ」
「まぁ…ある程度の高さから落ちることを祈るばかりですわ」
「昇りだしたら、全力で阻止しましょう」
ちょっと目を離している間に夏男は2階まで登っていた。
ガラスから内部を伺い、さらに上を目指している。
「仮に書記が最上階に住んでいた場合…ひい、ふう、みい……30階くらいありそうだぞ」
「バカだから考えてないんですよ、バカだから」
「いっそ30階から落ちればいいのですけど」
「二階堂さん、死んだらゾンビになるんですかね~」
「そもそも、ゾンビってなんなんだろうな?」
「一度死んで蘇るからゾンビなんじゃないんですか?」
「あらっ、ウチは朝起きたら皆、あぁなってましたけど」
「一晩で人類の大半が死んだとは考えに難いな…」
「そうですね~、ウチの母親も昨夜、僕にあんパンを差し出しましたよ、ゾンビだけど」
「ギリギリ生きてるのだろうか?」
「うっすら知性は残っているんですけど…8割はゾンビなのですわ」
「あっ‼ 5階で止まっているぞ夏男のヤツ」
「まぁ、苦しくなってきたのかしら? 落ちればいいのに」
「いや…なんか、そういう感じじゃないですよ」
5階、共有スペースで、豆乳を飲んでいる冬華、窓から顔を出す忍びの者と目が合った。
夏男がフリーズしている。
ゾンビがウロウロしている共有スペース、心なしかセレブ感が漂うゾンビの中で冬華はマッサージチェアにもたれ掛かっていた。
アガガガガガ…とマッサージしている、隣でゾンビもアガガガと揺れている。
スクッと立ち上がり窓からベランダへ出てきた冬華。
壁にへばり付く夏男を無表情に見下ろす。
スッと手を前に出して。
「モコズキッチン」
壁を伝ってオリーブがジワジワと落ちてくる。
慌てて横に移動する夏男。
それを追うように手を動かしてオリーブを流し続ける冬華、無表情だけど楽しそうだ。
難易度を上げることにしたのか、夏男の顔に塩を零しだす。
「なんか…時間の問題になってきましたね」
「早く落ちないかしら、寒くなってきましたわ」
「結果は見えたな、せめて積雪の上に落ちることを祈ることしかできないな」
「ワタシは、特に祈りませんわよ」
「あっ‼」
小太郎が小さな声を上げて、2秒後に夏男が雪の上に落ちてきた。
5階から夏男に飲み終えたと思われる豆乳のパックを投げつける冬華。
震える手で豆乳パックを握りしめ、ストローに口を付ける夏男。
「うわぁ…」
春奈が心の底から嫌悪の声をあげる。
「まぁ…大丈夫そうだな」
皆で、肉まんを食べながら帰りました。
(僕も独り暮らししようかな)
肉まんは美味しかったです。
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