第24話 すく~るろーど

「ところで、冬華君は、どこに住んでいるのだろう?」

 転校してきたということは引っ越しをしたということだ。

「そもそも…僕も、皆さんが何処に住んでいるとか知りませんけどね」

「まぁ、そうでしたの?」

「俺も春奈が何処に住んでいるか知らないぜ」

「えぇ、知られたくありませんわ、死んでも」

「よし‼ とりあえず、冬ちゃんをストーキングしよう‼」

「単純に明日、聞けばいいじゃないですか」

「あん? 貴様に何が解んの? 俺は、こっそり知りたいんだよ‼ 忍び込んだりしたいんだよ‼ オマエにストーカーの何が解んだよ‼」

 小太郎の胸ぐらを掴む夏男

「知りたくもないんですよ…触らないでください」

 夏男の腕を掴んで捻る小太郎

「痛っ…いだだ…痛いっての‼」

 パッと手を離してハンカチで手を拭く小太郎、軽蔑の視線で一言。

「クズが‼」

「軽蔑されてもいい…だがな、冬ちゃんの最もプライベートな空間に侵入する、それを想像しただけで…俺は、俺はもう‼」

 生徒会室を飛び出した夏男。

「うむ…止めねばなるまいな…秩序薄き世界にも守らなければならない人としてのラインというものがある」

「滑って転んで骨でも折ればいいのですけど…」

「二階堂さん…後門を猛ダッシュで駆け抜けていきました」


 ………

「付けてますね…二階堂さん」

 冬華の後を一定の距離を保って、物陰に潜みながらストーカーしている夏男、その後ろをゾロゾロと付いていく小太郎達。

 一応レベルで隠れてはいるつもりで、様子を伺っているわけだが…

「う~む、あの夏男の動き、先祖は忍びの者だと言われたら信じてしまいそうだな」

「ゴキブリのようですわ」

「あんなに俊敏に動けるんですね~」

「夏男の性癖が肉体のスペックを引き出した…あるいは限界を超えたのかもしれない」

「殺虫剤で殺せればいいのですけど…」

「天から巨大なスリッパを落とす能力者でも入れば良かったですね」


 冬華は、コンビニに寄ったり、スーパーに入ったり、ガシャポンを回したりとチョコマカと動き回る。

「忙しない娘だな…」

「本能のままに動き回るのね」

「基本…自由なんですね」


 肉まんをハワハワ食べながら駅前のマンションに入っていく冬華。

「なるほど…マンションか…空き部屋があれば住めるものな」

「問題は、あのゴキブリですわ」


 マンションの入り口でマンションを見上げる忍びの者。

「昇る気ですかね?」

「オートロックだろうからな…これ以上ストーキングする場合は、外壁からの侵入しかあるまい」

「5階くらいで滑って落ちればいいのですけど…」


 目の前で屈伸を始めた忍びの者。

(マジか?)



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