第21話 はんぐり~たいむ

「各自、適当な装備で校内の見回りを20分後に開始する‼」

(適当な装備って…言われても)


 20分後…運動部の部室から拝借してきた剣道の装備とか野球の装備で身を固めた生徒会の面々。

 ズシャッ…ズシャッ…

 武者が一人現れた。

「もちろん冬華です‼」

「ほほう…なかなかのやる気だな冬華君、天晴‼」

「冬華、ソレどこにあったの?」

 小太郎が尋ねた。

「校長室‼ もう一着ありました‼」

 夏男がダッシュで駆け出し、戻ってきた。

 ガシャッ…ガシャッ…

「こっちは想像以上に動きにくい…ホントにコレ着て戦えたのか?」

 西洋甲冑であった。


 ズシャッ…ガシャッ…ガキッ‼

「痛っ‼ 肉挟んだ‼」

(うるせぇなぁ)


 割合ソフトなジャージ鎧武者に対し西洋甲冑は動きが硬い。

「置いてくぞ夏男‼」

「バッカ‼ コレ着てから言えっての‼ オマエ、こんなん着てドラゴンとかと戦ぇねから‼」

「あらっ、大丈夫ですわよ、戦うのはゾンビだけですから」

「あっ? 剣を持ってくるの忘れた‼」

「ほう夏男よ、素手でいくのか…豪気よな」

「冬華…日本刀はありませんでした‼ 代わりにコレ持ってきました‼」

 ゴルフクラブをスラッと腰から抜く冬華。

(違和感は不思議とないな…)

「そんなもので戦う気か? 剣とは…実用性よりカッコよさなのだ‼ ゴッドイーター‼」

 秋季の右手に、機能性より刺々しいだけの黒い剣が具現化される。

「これぞ、神をも喰らう伝説の剣、堕天使たる私しか操れないという神器、和名でいえば神威‼」

「ゾンビ相手じゃビニールバット…」

 ボソリと小太郎が呟く。

「カッコいいな~」

 夏男だけは羨望の眼差しで見ているのだが、生憎と甲冑のフェイスガードで表情は見えない。


「夏男の甲冑も黒く塗れば黒騎士にジョブチェンジだぞ」

「それだ‼」


 15分後、甲冑は黒くスプレーされていた。

「臭い…シンナー臭いですわ、近寄らないでもらえませんこと…色んな意味で」

「金輪際‼」

 女子ウケが悪いのは甲冑やシンナーのせいでだけではない。


「特に校内のゾンビは暴れてないが」

「単に露出癖がマイブームなんじゃないですか? 帰りますか?」

「バカッ‼ 嘘じゃねぇって‼」


 言い争いの最中、裸足で駆けてく立花(保健)先生。

「あっ‼ 丁度いいわ暇人ズの生徒、手伝いなさい‼」


 皆で街中のゾンビに残飯を蒔いて与えたことで事態は収束した。

「昨日のアレで、エサをやり忘れていたわ‼」


「あ~…」

 満腹になって大人しくなったゾンビを眺めて小太郎は思った。

(ゾンビって、なんか思てたんとちゃう…)


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