第20話 ちぇんじひえらるきー

「そういうわけで、今日からも私が生徒会長だ‼」

 生徒会室に集合した、いつもの面々…夏男だけいない。

「おめでとうございます…ですわね」

 春奈がどうでもいい感じで一応の祝辞を述べる。

「で? 他はどうなるのでしょうか?」

「うむ、考えてあるぞ、会長だからな」

(なんだろう…以前より面倒くさい)

「発表する‼ 生徒会長、私‼ 副会長 春奈君、書記 冬華君、会計 小太郎…庶務 夏男」

「庶務…夏男さん来てませんわ」

「そういえば…いませんね」

「冬華は知りません‼ とくに興味もありません‼」

「存在感がありそうで、特に何もない男だな、ハハハ」

「あっ‼ 夏男さん…登校しましてよ」

 春奈が校門を指さす。

「なんか走ってますね」

「遅刻しそうだからじゃないのか?」

「いや…余裕の遅刻です」

「遅刻‼ は校則違反です‼ 冬華、生徒手帳読みました‼」

「うん…それを言うなら、授業時間に肉まん食べてることも違反なんだよ冬華」

「コレはピザまんです‼ 肉まんは食べてはダメとは書いてませんでした‼」

「ピザまんなんでしょ?」

「ピザまんもダメとは書いてませんでした‼」

「うん…いいんだけどね」


「おい‼ ヤバいことになってるぜ‼」

 夏男が息を切らして生徒会室に飛び込んできた。

「そのようだな…とりあえずズボンを履くがいい夏男よ…春奈がキレないうちに」

「履いてたさ‼ 途中までな‼ 脱がされたんだ…いや途中で脱いだんだ、イタッ‼」

 夏男の太ももにコンパスが突き刺さる。

「オマエ、コレ事件だぞ‼」

「その前にアンタの露出癖が事件だろ」

「違うんだ、いや違わないんだが…襲われたんだ、逃げるために脱いだんだ‼」

「逃げる? 敵前逃亡は……校則違反ではありません‼」

「とりあえずジャージでも履くがよい夏男」


 春奈が紅茶を淹れ始め、落ち着きを取り戻して夏男がジャージを履いたころ…。

「ゾンビに襲われたんだ」

「まさか?」

 秋季は取り合わない。

 ゾンビは、よほどのことがないと人を襲わない、食べ物と認識してないからだ。

「単純に不快だったんですわ、きっと」

「ゾンビを不快にさせるとは…オマエ、よほどのことだぞ」

「冬華、ゾンビより夏男が嫌いです‼」

「僕も…ミミズの方がマシですね」

「まぁ…ゾンビ以下でミミズ以下でしたの…納得のポジションですわ」

「泣くぞ…そろそろ泣くぞ俺‼」


「学校周辺のゾンビが狂暴化している…その原因を突き止めねばなるまい」

 生徒会長スクッと立ち上がる。


「皆の者、新生生徒会の初仕事だ‼」


(やっぱり…以前より面倒くさくなっている…ノリが面倒くさい)


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