第18話 すり~ぴーす

「私の出番か…」

 現生徒会長であるがゆえシード扱いの秋季が立ち上がりジャージを脱ぎ捨てる。

 Tシャツに大きく『IPPAI OPPAI』

「あらっ3人で決勝戦ですの?」

「そうよ‼ そろそろ帰りたくなってきたのワタシ、そこでレース方式で手っ取り早く決着を付けようと思ったの…さっき」

「さっき…思いついたのですね立花先生」

「種目は…借り物競争よ‼」

「ほぅ…アレだな、生徒会長たるもの、生徒からの信頼が必要だということだな、なかなか考えておられる」

「……うん‼ まぁ…そんな感じよ…信頼ね、大事よ‼」

(深読みだな…アレ)

 小太郎は言葉には出さなかったが、立花(保健)先生の後姿で解るほどに、そんなことまで考えてなかったオーラが立ち上っていた。


「そういうわけで、体育館に適当にばら撒いた封筒に書かれた物を借りて、先生に渡した順で1位~3位を決めます‼」

「それなら、2位と3位は別の方法で決められるのでは?」

 小太郎の方へ振り返った立花(保健)先生、

「さっきも言ったはずよ‼ なんか先生飽きてきたの‼」


「あぁ…俺も飽きてきた」

 泣き止んだ夏男が体育座りで隅っこで呟く。

(世紀末で体育座りか…なんだか惨めだ)

「あー、もう帰りたい‼」

 夏男が大声で叫んだ。

 タタタタ…冬華が夏男の所へ走っていった。

 無表情のまま冬華が夏男を指さし

「最下位‼」

「うわっ…うわぁぁぁ…うわぁぁぁーん‼」

 夏男が再び泣き出した。


「最下位は、無視して始めるわよ‼」

「では、小太郎…スタートの合図をくれたまえ‼」

(なにがくれたまえだよ…『IPPAI OPPAI』が‼)

「はいはい…じゃあ、よーいスタート」

 乾いた拍手がパンッと鳴り、3名が走り出す。

(春奈先輩も冬華さんも、嫌々と言ってた割には付き合いがいいんだよな~)


 各々が封筒を開封した‼

 秋季の封筒には『立花先生のパンティ』

 春奈の封筒には『冬華ちゃんのパンティ』

 冬華の封筒には『春奈のパンティ』


(なるほど…コレを書いたのは夏男だな…)

 秋季がフッと笑う。

「では立花先生‼ 脱いでいただこうか‼」

 立花(保健)先生の前に封筒に書かれた『立花先生のパンティ』の紙を突き付ける。

(あの顔で、意外に達筆だな…)

 無言で立花(保健)先生が、うつぶせて泣いている夏男の所にカツカツと歩いて行き、その脇腹を思いっきり蹴って戻ってきた。


「10分後に仕切り直しよ‼」


 10分で小太郎が書き直すことになった。



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