第16話 ぶれいか~ず

「第2回戦‼ 冬華VS小太郎‼」

「個性の塊と無色透明の対決だな」

「ドクター〇ッパーとエビ〇ンみたいなものですわね」

「俺はどっちが負けてもいい…会計が負ければ叩き潰す‼ 冬ちゃんが負ければ…グフフ…正面から堂々と…ムフフ」

 夏男が楽しそうである。

 負けたくせに…。


「生徒会長にはなりたくないけど、負けたくはないので全力で戦います‼」

(負けず嫌いなのかな?)

 とりあえず負ける気の無いド〇ターペッパーと、個性を消した天然水の勝負は、騎馬戦であった。

「……ゾンビに乗るんですか?」

「乗せたい側かしら?」

 立花(保健)先生が何か?と言った顔で小太郎の質問に質問を返す。

「見なさい‼」

 頭に紙風船を付けた冬華、しっかりと乗っている。

「ふんっ…ふんっ…」

 鼻を鳴らしながらウレタン棒で素振りしている、ゾンビメイトが複雑に絡まったような馬の上で…。


「勝負の前から逃げ腰ですか? 小太郎先生‼」

 もはや、やることがないから野次を飛ばすしかない夏男。

 アウァー…アウァァ…手錠でゾンビを繋いで、なんとか騎馬の形態に近づける。

 乗ろうと足を掛けるとヒンヤリ、ヌチャッ…とした感触が身体を伝う。

(スライムみたいだな…)

 上に座るとジャージにジンワリと体液が染みてくるような感触が、言い難いほどに気持ち悪い。

「よく躊躇なく鎮座できるな…彼女」


「それでは合戦開始‼」

 ぶぉぉおぉぉーーー…

 ほら貝の音でノロノロ…ヨタヨタ、ゾンビ馬が動き出す。

 右手でウレタン棒、左手でゾンビの手綱を操る。

 ビックリするくらい体幹が重要な競技である。


「ぶち殺すDEATH‼」

 死体に跨り死を口走るペイルライダー冬華。

 勢いのある掛け声とゾンビの動きがミスマッチ。

 なかなか接触しないまま10分が過ぎようとしていた。


「なかなか合戦になりませんわね」

「スタートの位置に問題があったことは認めるわ‼」

「なんか飽きてきた…俺」

 そもそもの発端が一番やる気を失うという、まさかの空気。


 ジリジリと距離が詰まってきた15分経過…事態が動き出す。

「モコズキッチン‼」

「えっ?」

 接触を目前に冬華の能力が発動する。

 小太郎のゾンビが溢れ出るオリーブで滑って倒れる…転がり落ちる小太郎。

 オリーブの溜まり場でゾンビとヌチャヌチャ縺れ合う。

「勝者‼ 冬香‼」

 騎馬が崩れた時点で小太郎の負けである。


「頭脳プレイ、天晴‼」

 秋季が扇子を広げて冬華のファインプレイを褒める。

 扇子には『俺のこの手が光って唸る』の文字。


「普通に負けたかった…」

「冬華‼ 勝ちました‼」

 ゾンビの上で勝ち名乗りをあげる冬華のジャージの尻の部分はゾンビの体液で濡れ、袖口はオリーブでヌチャヌチャ、勝っても負けてもヌチャヌチャであった。

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