第14話 だんすすてゅ~ぴっど

「で? 俺の役職は何になるの?」

 夏男が戻れる体で秋季に尋ねる。

「ふむ…皆の役職がスカスカだった以上、そういう意味でも役職を見直す必要があるかもしれないな」

「冬華、字は汚いです‼」

「まぁ自己申告ですわ」

「じゃあ、とりあえずホワイトボードに自分の名前書いてみたまえ」

 一同納得のクオリティだった。

「適材適所を考えて明日提出するように‼」

 立花(保健)先生はカップうどんの汁を飲み干して生徒会室を出て午後の授業へ向かった。

「会計、オマエ会長やるか?」

「いやいや、コイツに会長は早いって」

 当たり前の良ように口を挟む夏男、その違和感たるや…。

 昨日までなら当たり前だったのに、わずか24時間で、もはや不協和音だ。

「無職に言われたくないですね‼」

 小太郎の一言で、夏男が背中を丸めて部屋の隅で壁と話し出した。

「イラつくんだよ‼ その袖の千切れた鋲付き皮ジャンが‼」

 冬華が肉まんの下に付いている紙を丸めて夏男に投げつける。

「転校2日目で、このスタンス…冬華君が会長でもいいんじゃないか?」

「まぁ見事なスピード出世ですわね」

「そうなったら乗っ取られたみたいなもんですよ」

「なるほど買収というわけか」

「される側ですわね」

「悲しくなるからやめましょう」


 ………

「では、次期生徒会長は冬華君を推薦する」

 秋季が扇子をパチンッと閉じた。

「いや…今の問題を解決してから、次期の会長候補を決めましょうよ」

「ははぁ~ん…会計、オマエ自分が推薦されないからって…僻みですか?」

 部屋の隅からニヤニヤと笑いながら夏男が小太郎に絡みだす。

(なりたかないけど、アイツに言われると腹立つな)

 シカトを決め込むことにした小太郎。

「おい、無視すんなよ‼ おい‼万年会計‼」

「っせぇんだよ‼ 部外者は黙っててもらえますか? 生徒会メンバーの問題なので‼」

 柔い夏男のメンタルに氷柱が突き刺さった。

「そういえばそうですわね…なぜ部外者が出しゃばっているのかしら?」

 パチンッ‼

 冬華が夏男に輪ゴムを飛ばす。

「割りばし銃‼」

 黙々と何かを作っていた冬華、会心の出来栄えである。

「俺が生徒会長に立候補してやるよ‼」


 教室の隅で阿保が叫ぶ。


「えぇーっ…」

 秋季があからさまに嫌そうな顔をする。

「なんだよ、誰か文句あるのかよ‼」

「文句しかないから、この空気なんですよ…よんでくださいよ」


「あったまきた‼ こうなったら意地でも会長になるからな‼」

 夏男が立ち上がり、冬華が慌てて輪ゴム銃で応戦する。


「じゃあ、会長の椅子争奪戦です‼」

 窓から立花先生がニョキッと現れた。

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