第12話 すぽーつこみっく

「まずは降りなさい‼」

 立花(保健)教師がゾンビ神輿の前に立ちふさがる。

「我が覇道を阻む者か…蹴散らせゾンビ共‼」

 ゾンビ神輿、アッチにフラフラ…コッチにフラフラ…蹴散らす覇気を感じない。


「秋季先輩…カーテンを閉めましょう、見てられません」

「会計、夏男の生き様、その目に焼き付けよ」

「生き様って、あの男…屍に担がれてるんですよ‼」

「世紀末には大分早いが、時代を先取りしてきたなアイツ、天晴‼ それが世紀末」

「天晴‼」

 冬華が椅子に正座したまま万歳して叫ぶ。

「あの袖を引き千切ったようなシャツ、どこで買われたのかしら?」

「自分で引き千切ったんじゃないですか」

「あるいはゾンビに襲われたという線もある」

「ありませんよ、ゾンビに担がれてんだから…」

「ワッショイ‼ ワッショイ‼」

 椅子に正座したまま、夏男を煽る様に身体を揺らす冬華、無表情だが楽しそうである。

「いや会計よ、ゾンビキングとなって学園の支配に乗り出したとか?」

「アンタ、そんな脳みそだから、役に立たねぇ剣とか具現化しちゃったんだよ‼」

「せめて聖剣であれば無双できたでしょうに…残念なことでしたわ」

「いや…神に挑むことこそ王道‼」

「じゃあ、アンタもアッチ側ですよ‼ 一緒にワッショイしてたらいいじゃないですか‼」

「ワッショイ‼」

 冬華が秋季の右手を高々と上にあげる。

「いやいや会計よ、私は神に挑む片翼の堕天使的な存在かもしれないが、カレイド高校生徒会長でもあるわけでな……えっ? まさか? お前も神に挑む者ということか…会計、いや我が下僕よ」

「誰が下僕だ‼ アンタ堕天使じゃねぇからな‼」

「堕天使ではない…としたら私は一体……逆に神?」

 秋季が堕天使と神を行き来している間に、校門付近では事態に進展があったようだ。


 立花(保健)先生が、餌付け用の残飯的なナニカでゾンビの餌付けに成功した。

「勝負あり‼ でしょうか~ね~」

 残念そうな春奈。


 夏男がコントロールを失ったゾンビ神輿、傾き夏男が転がり落ちて、頭部を強打して…色々な事が重なって…泣いた。


「うわぁぁぁあー‼ 先生‼ 立花先生~」

 抱きつこうとして、カウンターで蹴られた夏男は更にギャン泣きした。

「先生‼ 生徒会がしたいです…」

「死体だけに?」

「うわぁぁぁー‼」


「立ちなさい二階堂君…先生も一緒に頼んであげるから」

「えぐっ…えぐっ…」


 肩を落とした世紀末が校舎に入っていく…。


「とんだ茶番劇でしたね…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る