第2話 ふぁんたすてぃっくすく~る
「僕の能力もアレですが…皆さんだって散々じゃないですか」
「言ってくれんじゃねぇか‼ 一年坊が~よ~ぉ」
夏男が小太郎に絡みながら肩をグリグリしている。
「痛っ…痛たた…マジで」
「だから渡しただろう、バファリン、どうだ、もう一錠?」
秋季がスッとバファリンを差し出す。
「結構です…」
「ところで、さっき私たちの能力がどうのと、おっしゃってましたけど~」
春奈が小太郎の肩にペタペタ何かを貼っていた。
「春奈先輩…なんか染みるんですけど」
「あら? サロンパスは痛みに効くって…」
「もう…いいです」
小太郎が窓の外をボーッと眺める…かじられた肩がジンジン痛む。
校庭ではゾンビ化した元生徒がサッカーボールをズルズル追いかけている。
(体育のつもりなんだろうな~)
楽しかった日常…憧れていた高校生活…全部崩れた。
「そう悲観したもんでもないぜ会計‼」
スチャッと眼鏡をかける夏男。
「楽しいですか? その能力」
カレイド高校三年 生徒会書記
容姿、中の下、拗らせた変態である。
そんな彼が宿した能力『スケルトン・マインド』夏男が眼鏡をかけると女性の着衣のみが透過する能力。
ほぼ裸族のゾンビ相手にはまったく用の無い能力である。
ちなみに彼が眼鏡をかけると、春奈の形相が夜叉となるという限定的な付属効果も持っている。
「……透けねぇんだわ…コレが…」
「夏男、透けたとして…見慣れたゾンビでは、どうもこうもあるまい」
「俺はな‼ 腐ったゾンビも服の切れ端が付着してさえいれば、男か女かの区別がつくんだよ‼」
夏男の目から大粒の涙がこぼれる。
「この世界が、まともな状態なら…状態ならば‼ 俺はスーパーアウトドア派であったでしょうね‼ 毎日、日が暮れるまで街を駆けずり回っていたでしょうよ‼」
「ゾンビだけ見てればいいんですのよ」
「なんだと‼春奈‼」
「コッチ見たら刺しますわよ」
夜叉降臨…。
「役に立たない能力ってことですよ夏男先輩」
「オマエに言われたくねぇんだよ‼」
「アンタの能力なんて、ゾンビがいなくても何の役にも立たないんですよ‼」
「バカが‼ 女の裸が見れない世界なんて無いのと同じなんだよ‼ 俺はな…俺はなー…」
いよいよ本気で泣き出したので秋季は、そっと洗顔シートを差し出した。
「バカな能力ですわね…」
春奈がフーッと大きなため息を吐いた。
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