第22話 女子同士の戦いは醜くも美しい 10

 トレアリィは袖に腕を通しながら、話題を変えました。

「それに、今わたくし達が抱えている問題は、ご主人さまのお体をどう取り戻すかのはずよ」

「そっ、そうだったね……」

 銀河もウィンドウを開くと、ボタンを押しました。

 そして、自分の見た目を裸からブレザーの学生服へと戻し、トレアリィに訊きます。

「体を取り戻すって、どのようにやるんだ?」

「具体的な方策を言うと」

 トレアリィは、腰のボタンを押しながら言いました。

 その声は、ブリーフィングをする医者のような響きがありました。

「精神か肉体に負荷を与えて、精神を追い出す、というのが一般的なやり方になるわ」

「その後で僕が肉体に入ると……」

「ええ。けど負荷を与えるので、当然のことながら肉体や脳を傷つける可能性があるわ。一般的には、電撃や術力などで肉体に高負荷を与えるんだけど、ご主人さまの体がそれに耐え切れるかどうか……」

「ちょっ!?」

「もちろんザウエニアなどには、肉体から精神を追い出す術式などがあったりするけど、精神抵抗の問題もあるから、必ず成功するとは限りませんし……」

「……どっちみち、僕の肉体が傷つくことは覚悟しなきゃならないか。……さて、みんなの元へ戻ろうよ。綾音とか美也子が心配していると思うし」

 諦め顔で銀河はベッドから立ち上がると、部屋の出口、だった場所へ早足で歩いていきます。

 時間も経っているし、早く戻らなきゃ、という気分があったからです。

「はい、ご主人さま。しかし、なにか方法はあるはずよ。なにか」

 トレアリィは、展開されたウィンドウを操作しました。

 すると、壁や天井、床一面が光り輝き、元のドアや窓に戻りました。

 銀河の部屋は、外の闇の明るさを取り戻しました。

「これで元に戻ったわ。ご主人さま」

 トレアリィが、ほほ笑みを浮かべた、その時です。

 元に戻ったドアが、ドンッ、という音を立てて開きました。特殊部隊が突入したかのように。

 その強く開けられたドアの先で、仁王立ちしていたのは。

 赤毛に、三毛猫のように可愛い顔、背はやや高くぽっちゃり気味の体格。

 茶色のセーターにジーンズを履いた少女が、腕を組んで仁王立ちしていました。

「……み、ミャーコ!?」

 そう。猫山美也子が、そこにいたのです。

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