04
今月3つある結婚式の、ふたつめ。
幸せそうな夫婦。祝う親族と友人。ありきたりだけど、幸せな形がそこにあった。
彼との結婚式を、想像できないわたしがいる。付き合ってすらいないけど、きっと、付き合っても、結婚式はないのだろう。彼は、きっと、掴もうとしても掴めない空気みたいに、消えてしまう。そんな気がした。
そんなことを思っていたら。携帯端末に、着信。
友達は多いけど、電話はほとんど使っていなかった。めずらしい。着信先不明。
電話に出る。
なんとなく、彼のような、気がして。
『もしもし』
ちょっと、遠めの電波。くぐもった声。でも、彼だとわかった。
「どうしたの。急に電話なんて」
『いま。テレビ。見れるか?』
「え。テレビ?」
結婚式会場にはない。外のロビーに出た。待機所。煙草の煙をかいくぐり、テレビに行き着く。
大会社の所得隠しが、大々的に報じられていた。アナウンサーもニュースキャスターも解説員も、てんやわんやになっている。
「なんか、所得隠しがなんとかって、ニュース、やってる」
『へへ。すごいだろ』
どこがすごいのか、よく、分からない。
『俺がやったんだ。これで、ちょっとは休みが取れるかな』
「ねえ」
彼の言葉に。不穏なものを感じる。
『好きだったよ。ありがとう』
それだけ。
電話が、切れた。
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