5 いざ買い物へ
第13話 買い物というのはつまり一歩を踏み出すかもしれない
謎が多い俺の世界になってきた。
俺は.....山城、中島と.....煎餅缶から繋がっていく。
まるで既に出来上がったストーリーの様だ。
本当に終わりから読み始める小説の様な、だ。
俺は山城か中島か何方かを俺の好きな女の子として記憶している。
ただ本当に顔の輪郭しか覚えてない、髪の毛の色を覚えてない、名前も記憶してない.....それは多分過去のせいだろうけど顔もイマイチしか覚えがない。
俺は.....その事にはひたすらに悲しみしか無かった。
何故かといえば俺は.....その幼い頃の女の子が好きだったから。
たった2週間だけだったけどその女の子の存在は俺の全てだった気がするのだ。
俺を心の底から助けてくれたから。
実は俺も女の子に襲われているのを助けた。
その時から女の子とは一心同体になったのだろう。
そしてその女の子が居なくなる数日前。
相性抜群だったその女の子と.....将来の婚約の約束を交わした。
そう。
煎餅缶に委ねたのだ。
将来の事を、だ。
だけど女の子は居なくなった。
話は今に戻るがその女の子は中島か山城か。
そこまで突き止めて俺の好きな女の子は何方かになった。
まさかここまで来るとは思わず。
ただ単に俺は困惑するしかなかった。
その二人は全く同じ記憶を所持しているのだ。
俺は何故なのだろうと眉を顰めて思いながらの4月29日土曜日。
つまり今日だが.....うーん。
「.....かなり動きづらい.....」
慣れない服.....じゃ無いけどあまり着ない服だ。
困るけど柚が選んだからな.....。
ジーパンにシャツに、的な感じの。
その服装に視線が集まっていた。
こんな姿で駅前に居るのは何というかデートなのだろう。
そんな勘違いの視線だ。
珍しいなモブの俺に視線が集まるとか。
「長谷川君.....!」
「!.....よ.....お?」
満面の笑顔を浮かべながら手を振りつつの可愛らしい服装の.....山城が来た。
どういう服装かというと。
アソート開襟マーブルTシャツ?だっけ。
キャミソールと組み合わせてデニムを組み合わせている。
俺はあまりの短髪に似合った服装の女の子の可愛らしさに赤面する。
確かに身長の低い山城によく似合っている。
周りが注目をしていた。
何あの子?モデルさん?的な感じで、だ。
あんなのの彼氏?とも聞こえるが余計なお世話だ。
違うっての。
赤髪を珍しく結ってない。
代わりにリンゴの絵のピンク色の髪留めをしている。
「.....お待たせ」
「.....あ、ああ.....」
「.....どうしたの?」
「い、いや。可愛いなって思って.....」
.....ふえ?、と言いながら真っ赤の真っ赤に赤面する山城。
それから.....俺を、そ。そう?、的な感じで見てくる。
俺は頬を掻いた。
正直言って可愛いと思いましたんで。
すると山城は俺のコーデもモジモジしながら褒めてくれた。
「.....格好いい」
「.....そ、そうか。.....行くか。人目も激しいし」
「そう、だね」
それから俺達は歩き出す。
山城は最後まで注目を浴びていた。
妬んでいる人も居る。
俺は.....少しだけ、どうだ、と思っている。
仲間はとても可愛いんだぞ、と、自慢げに、だ。
横の山城は、クスクス、と赤くなりながら笑った。
そしてはにかむ。
「.....私、可愛いんだ」
「.....気付かれたか。今の山城は.....言い表すならモデルさんだ」
「.....そ、そうなんだ.....きゃわおう!」
きゃわおう?
次の瞬間、口を触りながら悶える山城。
俺は.....見開きながら確認する。
そして大丈夫か、と聞いた。
山城は涙目だ。
「また舌を噛んだんだなお前?」
「.....」
俺は苦笑しながら見つめる。
こくこくと泣きそうな顔で小さく頷きながら。
可愛い小さな舌を出して手で仰ぐ山城。
俺は頬を掻きながら見つめる。
そしてつい小さく呟いてしまった。
「.....可愛いなお前.....あ.....」
「ふえ?.....え!?!?!?」
山城はボボッと茹でだこの様な感じになる。
しまった、うっかり呟いてしまった。
俺は慌てながら山城を見る。
山城は俺に、も。もう、的な感じで見てくる。
可愛い可愛いと言わないで、とも、だ。
「.....す、すまん」
「.....で、でも嬉しい。一言で言うと」
「.....そうか」
俺は鼻の下を掻いた。
そして買い物(?)が始まる。
俺達は二人並んで歩く。
すると.....山城が俺の手を、俺をチラチラ見てきた。
俺は?を浮かべる。
「.....どうした」
「.....大きな手.....」
「.....えっと.....繋ぐか?」
「.....!?!?!?!?!?」
言いながら差し出すと。
真っ赤になって思いっきりエンジンをバイクで思いっきり吹かした様に2メートルぐらい後退した山城。
俺は、オイオイ、と思いながらも恥ずかしいんだな、と思った。
そして戻って来て.....俺を上目遣いで見てくる。
まるで小動物の様な様に俺は赤面する。
「.....きょ、今日は.....がちのがち?で遠慮しておく.....」
「そ、そうですか」
「.....さ、さあ早く!行こ」
「.....わ、分かった」
山城が先陣を切る。
そして何だか曖昧な感じの.....買い物が始まった。
山城は.....嬉しそうに笑顔になる。
イチゴの香りがニコニコする度に振りまかれる。
その度に真っ赤になった。
何で女の子ってこんないい香りするの?
そしてこれデートみたいだな.....と改めて赤くなる。
どうしたもんかな.....。
山城はもしかしたら俺の好きな女の子かも知れないから。
しかしこの買い物だが.....また色々と巻き起こる。
その度に俺は盛大に溜息を吐かずには居られなかった。
もう.....ね。
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