第12話 互いに持つ記憶とはつまり混乱が起きる

滝山先生が見守る中、反省文を書いてから俺達は帰宅した。

その中で夜、俺は考える。

中島由紀。

そして山城美玖。

俺はこの二人のうちどちらかを確実に知っている。


何故かと言えば.....中島か山城のどちらかが俺と親密だった幼い頃の女の子の可能性があるから、だ。

衝撃的事実だった。


山城も.....俺の幼い頃の親密な女の子の可能性が浮上した事が、だ。

俺は顎に手を添えながら.....考える。

そうしているとリビングで柚に声を掛けられた。


「お兄ちゃんまた悩んでる」


「.....別に良いだろ。悩むのが俺なんだよ」


「いや.....それはそうだけど人生つまらないよ?そんなの」


「.....確かにな」


まあ取り敢えずは悩んでも仕方が無いか。

思いながら俺は溜息を吐く。

そして生徒手帳を出した。


これから先の予定表を確認する為だ。

5月の中頃に.....テスト。

それから体育祭だ。


「お兄ちゃん」


「.....何だ?」


「.....買い物には何時行くの?山城さんと」


「それもそうだな。曖昧になっていた」


俺はスマホを取り出す。

それから山城の電話番号にプッシュする。

そして電話を掛け始める。

すると直ぐに、ひゃ、ひゃい!、と山城が出た。

俺は苦笑する。


「山城。相変わらずだな。落ち着いて」


『.....ご、御免なさい。その、何』


「買い物の件だけど.....何時行く?」


『.....え。覚えてくれていたの。嬉しい』


パアッと顔が明るくなる様な感じで俺に言葉を発する山城。

俺はその言葉に、ああ、と返事しながら。

少しだけ真剣な顔になる。

山城、と問いかけた。


『何?』


「.....その。煎餅缶を見るか?」


『.....うん。もしかしたら何かあるかも』


「じゃあ中島に許可を取らないとな。それから.....煎餅缶を見よう」


そうだね、と返事をする山城。

俺は笑みを浮かべながら、元気か、と聞く。

山城は、うん。元気だよ?どうしたの?、と話した。

俺は、何でもない、と首を振る。

それから、じゃあ今週の土曜日でも行こうぜ、と誘う。


『とっても楽しみ。私.....』


「.....確かにな。俺も楽しみだ。買い物」


『有難う』


「.....何も気にする事は無い。.....んじゃな」


うん、と嬉しそうに電話を切る山城。

俺はそれを確認しながら柚を見る。

柚は、じゃあお兄ちゃんのファッションを決めないと、と慌てていた。

何でそうなるんだよ。

俺は目を丸くした。


「オイオイ。買い物だって。柚」


「でもそれってデートだよね?事実上。女の子からのお誘いなんだよ?」


「いや.....デートって.....流石の山城もそこまでは考えてないだろ」


「もー!お兄ちゃん駄目だよそんなんじゃ!」


とにかく!服を決めないと。

女の子と一緒なんだから、と柚は慌てる。

俺は、そ。そんなもんか、と圧巻されていた。

それからスマホを見る。


「.....でも今は良いよな。通信手段がこんなに有るんだから」


思えば。

あの時別れた女の子とは.....文通が出来なかった。

だから今は羨ましいよな。

こんな簡単にやり取りが出来るのが、だ。


「.....やめやめ。今更、複雑になってもしゃーねぇ」


俺は首を振りながら鞄からラノベを出した。

それから読んでみる。

面白いラノベだな。

竜彦が推奨する理由がわかる。

俺はクスクス笑いながら.....見つめる。



柚はまだ服を悩んで選んでいる様だ。

俺はその様子を伺いながら、そんなに考えなくても、と思ったのだが。

思いながら俺は台所に立つ。


それから.....フライパンで卵を焼き始めた。

夕飯を簡単に作っている。

柚が俺の服を選んでくれているから、だ。


「.....」


前を見る。

そこには.....幼い頃の柚の写真。

そして俺の写真が有った。


俺は.....その様子を見ながら.....山城と中島の事を思う。

彼女たちがもし.....本当に俺の馴染みだったら。

赤面ものだなって思う。


「お兄ちゃん。服」


「.....あ?ああ。すまんな」


「お兄ちゃんは鈍感だから」


「.....お前には頭が上がらないよ。柚」


でもさっきから何を見ていたの?、と俺に笑む。

俺は、ああ。実はな山城が、と説明した。

すると見開く柚。

それから、そ。それって結構大変じゃ、とアワアワとする。

俺は、そうだな、と返事した。


「.....山城か中島か。どちらかは分からないけど.....」


「.....でもあの人達が.....その女の子なら.....凄い.....」


「神様って面白いよな」


「そうだね.....賽は投げられたって感じだね」


あ、それは良いけど!卵が焦げてる!!!!!、と柚は絶叫した。

俺は、あ!?、と慌てる。

なんてこった!?

思いながら.....俺は柚を見て苦笑い。

そして.....俺は焦げた卵を乗せた。


「もー。気を付けないと」


「すまん.....」


「もー。私がやるから。お兄ちゃんは下がって」


「はい.....」


そして俺は退場した。

そのまま.....勉強を始める。

柚には本当に頭が上がらない。

困ったもんだ、と思いながら.....数学の教科書を開く。

そうしていると電話が掛かってきた。


「.....中島?.....嫌な予感がするんだが.....」


俺はエロゲの声は勘弁だぞ、と考えながら電話に出る。

すると中島が、もしもし?、と言ってくる。

俺は、おう、と返事した。

そして中島は話を続け始める。


『えっと。君の言っていたほーちゃんに関してなんだけど.....』


「.....?.....ああ。.....えっとどうした?」


『.....昔のアルバムを観ていたら、大切な人へ、って書いてあって名前が有ってほーちゃんって書いてある。でも写真は無いの。そ、それで.....その。その人と結婚するっても書かれてる。君の言った通りだけど.....今まで忘れてた』


「.....え.....」


考え込んでいると同時に山城からもメッセージが入った。

それから.....そこに、昔のアルバムを何気なく観ていたらアルバムの隅にほーちゃんって名前があった。結構昔の男の子のあだ名みたいで将来結婚したい。とも書かれていた。今まで忘れていたけど。写真は無かった、と書いてある。


俺は.....スマホを観て困惑する。

何がどうなっているのだ?、と。

どっちが.....え?、と。

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