第14話 意を決するとはつまり負けたくない気持ちが芽生える

「山城。お前今日は何でリンゴの模様の髪留めをしているんだ?」


「あ.....気付いてくれたんだ。.....嬉しい」


「そりゃ気付くだろ。お前何時も前髪結ってたしな」


俺は笑みを浮かべる。

山城は少しだけ恥じらいながら俺を見てきた。

俺達は近所のショッピングセンターに来ている

新しく出来た訳じゃ無いのであまり綺麗とは言えないが2階建ての、だ。

店内を散策する。


「ね、ねぇ長谷川君」


「.....何だ?」


「か、買い物に付き合ってくれて有難う」


「.....今更だな。どうせ家じゃやる事無いしな。それにお前の誘いじゃ断れない」


そうなんだ.....、とコロコロした感じでニコニコする山城。

ああもうチキショウめ。

可愛いなコイツ.....。

もしこの子が俺と付き合ったら毎日が幸せだろうな。

マジに、だ。


「.....私.....色々巡りたいな。買い物って言ったけど」


「山城が好きな場所に行けばいい。俺は付いて行く」


「.....その.....長谷川君は行きたい場所無いの」


「俺は書店かな。それと.....ゲーム屋に行ってみたい。このショッピングセンターに有るしな。小さいけど」


ゲーム.....、と期待に目を輝かせて俺を見てくる山城。

どうやらゲームを家でする事。

それを望んでいる様だ。

そうだな、俺言ってたしな。

俺は苦笑しながら山城を見つめる。


「.....今度家に来いよ。遊ぼうぜ」


「.....あ、有難う」


「しかしそれはそうといちいち照れるな。恥ずかしいんだが俺も」


「照れるよ。だって.....好きな人と一緒だもん」


満面の笑顔。

鼻血が出そうになった。

俺は鼻の付け根を触りながら.....上を向く。

そして前を見た。


何でこんなに可愛いんだろうか。

デートじゃないのに。

うん。


「.....そ、その。長谷川君」


「どうした?」


「.....な、中島さんの事、好き?」


「ぶふぁ!」


突然、何を言い出すかと思えば。

真剣な顔で俺を見てくる山城。

中島は.....あくまで知り合いだが.....そうだな。

僅かに意識し始めている。

俺は少しだけ頬を掻く。


「ごめんな。意識して無いって言ったらウソだ。だから.....ごめんな。意識している」


「.....じゃあ私、負けない」


「.....え?」


「負けない。私、中島さんに勝つ」


山城は俺を意を決した様に見つめてくる。

そして笑みを浮かべた。

私の方が魅力が有るから.....勝つ、と高らかに宣言する様に俺を見た。

俺は恥ずかしくなって頬をガリッと掻く。


「.....中島さんは君の女の子かも知れないけど。.....でもそんな事は関係なく私は君に好きになってほしい」


「.....山城.....」


「.....私、君が好きだから」


「.....」


言っているうちに。

山城の頬がトマトが熟した様に真っ赤になっていく。

それから.....顔を手で覆う。

そして俯いた。

恥ずかしくなったようだ。


「.....お前が好きって気持ち。俺は十分に分かってる。有難うな本当に」


「.....うん。何時か君が振り向いてくれる事を願ってる」


「.....」


中島か、山城か。

俺には分からない。

だけど.....彼女達の思いを受けている。

中島はあまり身を出さないけど.....多分俺を見ている。

自信過剰かも知れないけど。


「.....じゃ、じゃあ行こうか」


「そうだな.....ん?」


目の前を見ると。

サングラス姿の.....ニット帽を被った女が居た。

俺は?を浮かべてその女を見つめる。

女はゲーム屋に入って行く。

って.....まさか。


「や、山城。ちょっと待っていてくれ」


「え?あ、うん。どうしたの?」


「トイレ行ってくる」


それから嘘を吐いてから。

俺は直ぐにゲーム屋に入って行ったその女を追いかける。

そして監視を強めると。


案の定だった。

その女は周りを見渡して18禁コーナーに入る。

俺は茶髪のその女を追いかけて18禁コーナーに生まれて初めて入った。

エッチなゲームだらけの中。


「オイ」


「.....え」


「.....お前.....またか.....」


「は、はえ、がわくん!!!!?」


思いっきり舌を噛む中島。

それから悶えながら周りを見渡してそして更に赤面していく。

何をしているんだよ.....。

またエロゲか。

額に手を添えながら中島を見る。


「わ、私は.....弟の為に!!!!!」


「いや叫ぶな!周りの人達が見ているから!勘弁してくれ!」


「あ、うん.....」


「とにかく。.....あまりエッチなゲームに毒されるなよ」


あ、はい.....、と言いながら。

シュン、とする中島を置いてそのまま外に出ようとする。

のだが。

中島が声を掛けてきた。

ま。待って、と、だ。


「嫌いにならないで」


「.....え?」


「.....わ、私はエッチだけど.....うん」


「.....???」


いきなりなんだ。

意味が分からないが。

赤面しているそんな中島を一瞥してからそのまま外に出ると。


そこに.....真っ赤になって目をパチクリしてアワアワしている山城が居た。

俺は冷や汗をかく。

見られた様だ。


「で、でも男の子だもん.....ね.....」


「.....誤解している。良いか。俺は.....」


「.....で、でも.....エッチ。変態.....」


「.....」


中島の野郎。

要らぬ濡れ衣を着せられた。

俺は18禁の先に居る中島を睨みながら。


赤面で俺達はゲーム屋を出る。

そのまま盛大に溜息を吐きつつ.....中島が居なくなってから後でまた寄ろうと思い、そしてゲーム屋を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る