3 煎餅缶の宝物と苦い記憶

第7話 煎餅缶とはつまり恋の思い出を意味する(編集)

「うおおおお!!!!!テメェマジにふっざけんなぁ!!!!!」


「うお!?いきなり何しやがるテメェ!」


いきなり背後からぶっ叩かれた。

叩いた張本人は竜彦だ。

俺に逆三角形の目をしながら身体の背後にメラメラと炎を噴き出している。

それから俺を睨んでいる。

何だってんだよ!


「お前というボケナスは見損なったぞ」


「何だよ一体!?イッテェな!」


「とぼけるな!お前!中島と山城を手玉に取って.....通学だ!?いいご身分だな!ハーレムアニメかよ!何をしているんだ!!!!!」


「手玉っておま.....あ?.....あー.....でもその事か」


歯を食いしばる竜彦。

くそう!お前の様な奴は友人ではないっ!と血涙を流す童貞。

俺はその光景を苦笑いで見つめる。

そうしていると山城がこちらにやって来た。

何を話している?的な感じで。


「ああ、何でもない。竜彦がただ単に暴れているだけだ」


「.....そ、そうなの。須山君が何で暴れているの?」


「.....理由は聞くな。これ以上苦しめるだけだ」


「え?」


とにかく暴れるから聞いてやるな。

考えながら俺はジト目で、ァァアァア!!!!!、と頭を掻きむしって猿の様に奇声を上げるクソ馬鹿を見る。

そして教室の男共に、須山ウルセェよ!、と説教された。

馬鹿なんじゃないのかコイツは.....。


「.....あ。それはそうと.....えっと.....話が有る.....」


「は?話って何だ」


「か」


「.....か?」


かいもろに一緒に!と思いっきり舌を噛んだ様に悶える山城。

俺は?を浮かべながら顎に手を添える。

大丈夫か?と聞きながら、だ。

そして数秒間、顎に手を添えて考えて赤面で驚愕する。


「え?買い物、一緒に?」


「..........」


こくんとこくんと頷く山城。

その目が期待有る回答を望んでいる様な顔をしている。

とても可愛らしい顔だが.....え!?

俺は驚愕していると。

背後から憎悪の炎が.....感じれた。


「お前という奴はもう友達じゃねー!!!!!反逆すっぞお前らァ!!!!!」


だがその意見に付き合ったりする輩は居らず。

誰かが、一人でやれ、と呟く。

そもそも俺達そこそこにボッチだしな。

そんな言葉に誰が付いて行くというのか。


とにかく竜彦だけが煩かった。

だけど.....竜彦に付き合ったりはしないが教室の男子達の目が、なんだなんだ、と一気に俺に怪しげな目線になった。

山城は勇気を出した様だ。

赤面で俺を見てくる。


「だ、だめ?」


「.....くそう。可愛いなお前」


「.....ふえ?」


「あ.....いや、何でもない」


かなり真っ赤になっていく山城。

ボシュンと音がした。

するとそんな俺達の所に中島がやって来る。

中島は、何々?デートするの?、的な感じでノリノリだ。


「デートじゃ無いけどな。でも買い物だって」


「そうなんだ。じゃあ.....あそこ行って来たら?この前出来た化石の博物館」


中島は可愛らしい笑顔を見せる。

その言葉に、そうだな、と俺は笑みを浮かべる。

竜彦は、羨ましいな、と俺を見てくる。


そんな可愛らしく言っても可愛くないぞ竜彦。

思いながら中島の話を聞いていると次の言葉に。

俺はピクッと固まった。


「でね、その近くの桜木が沢山有る土管が2つある公園に.....私が可愛いものを集めた煎餅缶を埋めているんだ。その場所を教えるから.....デートついでに見たら良いかも!私自身の観光名所だから」


「.....おい。中島」


「.....ん?どうしたの?長谷川君」


「.....何でその煎餅缶の事を知っているんだ?」


俺は.....ガタンと椅子を立ち上がる。

真剣な顔で中島に聞く。

中島は、え?え?、的な感じで慌てている。


俺が幼い頃、あの焼けていた写真立ての.....女の子と煎餅缶の宝箱を創った。

何故それを.....あの女の子しか知らない様な事を中島が知っているのだ。

俺は.....立ち上がって中島の肩を掴んだ。


「.....中島。ほーちゃんという名に聞き覚えは無いか」


「.....ほーちゃん?え?え?それって何?」


「お、おい。どうしたんだよ?豊樹」


ちょっと黙ってくれ。

これはもしかしたらマジに大変かもしれない。

俺も母さんも父さんも名前を忘れてしまった短いけど.....あの印象に残っているあの女の子.....少女かも知れない。

ずっと会いたいって思っている人が、だ。

その煎餅缶は俺とその女の子が地面に埋めたんだ。


「.....ほーちゃんはゲームのキャラか何かかな?.....ごめん。分からない」


「.....!.....そうか。.....し、知らないか」


「えっと.....ごめん。本当に聞き覚えが無いかな.....」


俺は中島の肩から慌てて手を放す。

そして複雑な顔をする。

俺の勘違いだったか。

思いつつ俺は額に手を添えながら椅子に腰掛ける。


何故こんなにその女の子にこだわるかって?

実は俺は好いているのだ。

その女の子の事を、だ。

だから真剣になったんだ。


「大丈夫。長谷川君」


「.....あ?.....ああ」


横からハンカチで俺の汗を拭う山城にそんなに反応が出来なかった。

これは俺の勘違い?

そんな馬鹿な事って有るか?

俺とその女の子しか知らないんだぞ埋まっている事を、だ。

何がどうなっている?


キーンコーンカーンコーン


「チャイムが鳴ったね。戻ろうか。山城さん」


「はい」


そして、じゃあね、と言う中島と山城を見送る。

それから.....俺は前を見た。

竜彦が?を浮かべて聞いてくる。

どうしたんだよお前、的な感じで、だ。


「.....すまん。少し一人にしてくれ」


「.....え?ああ。良いが.....」


何かあったら声掛けてくれよ?、と心配げに自分の席に戻って行く竜彦。

本当に冷たくあしらってしまって申し訳無いがちょっと.....考えたい。

何がどうなっているのだ本気で。

俺とその女の子しか知らない秘密なのに.....だ。


『ほーちゃんとしょうらいけっこんするためにうめるからね!』


「.....」


そして授業が始まってしまった。

俺は首を振ってから。

集中する為に前を見た。

今考えるのは良くないな。

数学に集中しなければ。



「ちょっと話が有るんだけど.....いいかな。長谷川君」


「.....?.....ああ。良いぜ。俺も丁度話があるから」


「え?何の?」


「.....良いから」


竜彦と山城に帰ってもらってから。

俺達は屋上にやって来た。

そして中島を見る。

中島も俺を見ながら笑みを柔和に浮かべる。

茶髪がなびくのを抑えながら、だ。


「私から話す?それとも君から話すかな」


「.....あ、ああ。どうする」


「.....じゃあ私からね。.....えっとね。ほーちゃんってのを一生懸命に考えたんだけど.....答えが出なかったんだ。ごめんね。でもそれでね。.....もし良かったらまたゲーム屋とかに行かない?君と一緒なら何か思い出せるかもしれないから」


「.....!.....そうか。有難うな」


うん。でも買うのはエロゲじゃ無いから。

え・ろ・げ、じゃ無いから!!!!!

と強く目をぐるぐる回しながら俺を見てくる中島。


俺は、お。おう、と返事をする。

とは言っても信じられないが。

そういう事にしておこう。


「で、君は何の話かな」


「あ?ああ。えっとな.....中島。いきなり肩掴んでごめんな。それが気になっていたんだ」


「.....え?それだけ?.....良いよ別に。アハハ。気にしないで」


「.....有難う。あ、それと.....煎餅缶の事だけど.....誰かに聞いたのか?」


煎餅缶の事?ああ.....えっとね。

私、昔から知っていたよ。

でも何で知っているんだろう。


分からないけどね。てへへ、と舌を出す中島。

俺は、.....そうか、と返事をした。

本当に何故知っているのかわからない様だったからそれ以上は聞かなかった。

俺は少しだけ笑みを浮かべる。


「.....ごめんな。話はそれだけだ。すまんな」


「.....あ、そうなんだ。じゃあ帰ろっか」


「.....そうだな」


うん、と元気よく返事する中島。

今日1日で.....色々な事を思い出したり。

聞いたりしたな。

その様に懐かしくとか考えながら.....俺達は屋上を後にした。

何故.....女の子と俺しか知らない筈の秘密の煎餅缶の事を知っているのか分からなかったが.....。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る