第5話 身体に染み渡るはつまり恋の味
「で?何故この家に山城さんが来るのかな?」
「面倒臭いな。山城が落とした生徒手帳を返す為だって」
「.....ふーん。怪しいけどそういう事にしておいてあげようかな。怪しいなー」
そういうお前だって何をしに来たんだよ。
お兄ちゃんが女子二人を連れて来た!って柚が大変大変、と大騒ぎなんだが。
勘弁してくれよマジで。
と思いながら玄関で額に手を添える。
まるで地獄に来た気分だ。
「.....め、迷惑だったら帰る」
「.....迷惑じゃない。中島はちょっとアレかもしれんがな」
「え!?なんでかな!?」
目をパチクリする中島。
言わせるなよ恥ずかしい、とでも言いたい気分だ。
だってコイツは18禁のエッチなゲームを買っていたんだぞ。
変態かもしれないしな。
勘弁してくれ。
「私の事なんだと思っているの!」
「.....どちらかと言えば絡みにくい」
「そうだけど!確かにそうだけど!でもなんか嫌だ!」
そんな感じで居ると。
山城が泣きそうになっていた。
やっぱり.....二人は.....的な感じで、だ。
俺と中島は、え!?、的な感じになる。
「山城さん!長谷川君とはそんな間柄じゃ無いから!」
「そうそう!違うから!」
「いやそんなに真っ向から否定されるとムカつくんだけど.....」
「どっちだ!!!!?」
ああ面倒臭い!!!!!
俺は考えながら頭をグシャッとしてから。
落ち着き、取り敢えず上がって行ったらどうだ、と考えを纏めた。
2人は顔を見合わせて頷いた。
そして靴を脱いでからそのまま上がる。
「.....そのえっと」
「.....どうした?山城」
「.....クッキー焼いた。食べて」
「.....?.....家庭的だな。お前は料理出来るのか?」
こくんと小さく赤くなりながら頷く山城。
髪が揺れる度にイチゴの香りがする。
甘い香りで俺は赤面する。
そんな姿を見ながら中島が、じゃあ一つ貰うね、と食べた。
行儀が悪い。
「何してんだよ。行儀悪いな」
「ここは長谷川君の家だし.....それにもう私達、仲が良いじゃない」
「何を言ってんだよお前」
また泣きそうになる山城。
俺達は慌ててワタワタと宥める。
こんな簡単に泣きそうになるとか.....くそう!可愛いな!
と思いながら.....俺はソファに案内した。
紅茶でも要るか、と聞く。
「じゃあお願いします」
「私も.....」
「はいよ」
そして柚にお願いして紅茶を淹れてもらった。
それから.....二人の前に腰掛ける。
横に柚が腰掛けた。
そして生徒手帳を取り出す。
「.....ほい。山城」
「あ、有難う」
「.....で、何でお前まで何で付いて来たんだよ」
「如何わしい事をするんじゃ無いかなってクラス委員として見捨てられなかった」
ニコッとする中島。
何を思ってんだ。
っていうか俺を何だと思ってんだよ。
良い加減にしろよマジに。
エロゲの件をバラすぞ。
「ふ、2人は仲が良いんだね。いつから?」
「私は.....」
「俺は.....」
いや言えないんだが。
エロゲを中島が買っていて出会ったとか普通言えるか?
言える訳がないんだが。
俺達は、取り敢えず仲が良くなったって感じだよ、と説明した。
「そ、そうなんだ。.....あ。長谷川君。この中身見てない.....よね?.....私、恥ずかしくて死んじゃう」
「み、見てない」
否定するのに舌を噛んでしまった。
俺は悶え苦しみながらハッとして横を見る。
軽蔑の眼差しで俺を柚が見ていた。
前を見る。
中島が同じ眼差しで俺を見ている。
「.....お兄ちゃん?」
「.....長谷川君.....?」
「.....長谷川君.....まさか.....でも見ないと電話番号とか分からない.....」
「.....見たと言える。御免なさい」
その場で土下座した。
それから謝る。
すると.....中島が、獣、と呟いた。
お兄ちゃんサイテー、とも聞こえた。
お前ら.....。
「見ちゃ嫌だった.....けど」
「ごめん。マジに御免なさい。.....でも誰のか分からなかったからよ」
「う、うん。.....そうだよね」
仕方が無いよね、と恥じらう様に俯く山城。
俺は必死に謝って取り敢えずは収まった。
そして少しだけ話してから。
それから.....帰り際になって山城が聞いてきた。
「長谷川君」
「.....何だ。山城」
「.....バレちゃったから.....言うね。私、君が好き」
「.....!」
ビックリ的な感じで中島が見開く。
そして柚は真っ赤になる。
俺も赤面した。
そして山城を見つめる。
山城は本当に精一杯だったのか今にも溶けそうなぐらい。
真っ赤になっていた。
そして顔を上げる。
「.....返事は今度でいい」
「.....あ、ああ」
「.....じゃ、じゃあ」
「あ、ああ」
中島と山城はそのまま後にした。
俺は告白に手に汗が握られている。
柚が俺を見てきた。
お兄ちゃん良かったね、と笑みで、だ。
「.....正直、あんな事があったからな。幸せになって良いんだろうか」
そんな俺のポツリとまるで囁く様な声に複雑な顔になる柚。
それから首を振った。
そして俺の手を握って見てくる。
もう止めよう、的な感じだ。
「もう良いじゃない。あの事は。お兄ちゃん。忘れよう。幸せになろうよ」
「.....そうだな」
「.....」
最悪な事が有ろうが無かろうが。
もう直ぐまた夜が明けようとしている。
父さんと母さんが帰って来てから翌日になって俺は更に驚愕する事になった。
何を驚愕しているかって?
俺を中島と山城が起こしに来たから、だ。
いや、ちょっ。
どういう事だよ!?、と思いながら俺は目を丸くする事になる。
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