3話.3行の恋文
私は、あの事故の前に想いを一度だけ伝えたことがある。
しかし、あの子は返事を言わずして、去ってしまった。
まるで私から逃げているように。
それは非常にショックであった。でも、不思議と失恋ではないのかもしれない。
あの子はその日、私の家の方に向かっていた、と後で知らされる。
もしかしたら、あの恋文を返事をしに、向かっている途中で、あの子は...
そう考えると、私は私でいられなくなった。
この罪は、どうやっても拭えない。そしてそんな時、ふと思った。
あの子は、あの日、何も持っていなかったと聞く。
もしかして、まだあの恋文があの子の家にあるのでは。
そう思った矢先、無我夢中で私は家を飛び出していた。
そして気がついたら、憧れのあの子の家の前に立っていた。ドアをノックするのに、緊張して体が硬くなる。
コンコンコン、
家中に響いた。
そして、女の(シクシク)鳴き声とともに、
「どなた?」
と玄関口言うのです。
「私は、あなたのお嬢さんの同級生です。」
なぜか、畏まった態度をとる私であったが、そんな私を見て、微笑みを浮かべるのです。
「娘とあなたのご関係は?」
彼女はそう聞くのです。困りました。
「私は、ずっと前からお嬢さんに初恋をしていました。」
彼女は意外にも冷静でした。
「そう、よかったわ。あなたが来て・・・あの子ったら、初めて好きになった人から恋文、もらったって喜んでたわよ」
私は冷静でいられませんでした。まさかの相思相愛、だったのです。
もしかしたら、あの日、あの子は私に・・・
そのような妄想をしつつ、私はあの子の家に上がらせてもらった。そして居間に着いたとき、奥さんはこう言いました。
「あの子、きっと喜んでおります」
その一言と同時に、ある安そうな紙切れを私に見せられました。
私はずっと、あなたのことが好きでした。
ずっと前からあなたのことが好きでした。
これからもずっとあなたのことを好きになり続けるでしょう
そう書かれた、たった3行の恋文。
私には、これを書いたときの記憶がありませんでした。
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