2話.道に准ずる父と息子⑵

5年前、父がまだ元気だった時の大晦日、除夜の刻。

父と一緒に外へ散歩をしていた。ただのらりくらりと、彷徨していたのを鮮明に覚えている。確か、あの時もこのような雪が降っていた。

私は、あの時の記憶と今の情景が合致した。

『そういえば、前もここに来たこと、あるな』

ふと漏らした一言は、父との思い出であった。そこは、ただちっちゃな小川が私の目の前を流れる。時の流れは無常である。あの鴨長明の残した(ゆく川の流れ)は父が大好きだった作品であり、偉人だ。

『今は、こんな小さな川だけど、いつかは大きな川へ変わる。お前もbigになるんだぞ!』

男手一つで育ててくれた父は、その時、何気なく悲しげに見えた。

それから、新年が明けて数週間後に父は倒れて、今に至る。



私は、bigになれたのだろうか。人によって解釈が異なる言葉ではあるが、私はこう解釈する。

『私みたいな気弱で内気な性格の子でも、殻を破れば、好奇心旺盛で明るい性格へ変貌を遂げる』

私にはこう聞こえた、と思う。父の真意は定かではないが。

もしかしたら、父の気持ちがまだこの遺書に綴られているのかもしれない。

だが、この後は父の恋文...別に興味がないとうわけではないが、自分の倫理観が問われてる気がして、嫌になっていた。

でも、これは父の想い、真実が込められている。人は必ず真実は掴みたいのが必然。なので、長い葛藤の末に、私はふと遺書の続きを読むことにした。

この寒さで赤くなった手で...

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