第17話 電話の向こう

「何〜?誰いまの?」

「学校時代のツレっすよ。」

「ふ〜ん、女の子?」

「まぁ、そうですけど…。」

「さっすが、りょう君その時からモテてたんだねぇ〜。」

探るような視線を避けながらりょうはそっけなく答える。ああもうイライラする。持ち上げながらも全然笑ってないその目。男の嫉妬ってほんとめんどくせぇ…。


いや違う。男の嫉妬が面倒なんだな。

軽く一礼してその場を去ろうとすると、後ろからグッと肩を掴まれ、ロッカーに背中から打ち付けられる。まぁまぁ大きな音がしたが、音だけが派手で痛みはそれほどない。

「どーこ行っちゃうのぉ?りょうく〜ん?先輩話してんだろぉ〜?」

「…すいません。」

「えっ?な〜に〜〜??聞こえたか今の〜??」

周りのニヤついている取り巻きに向かってゆっくり喋るロン毛。

いや〜、どうっすかね〜とかいうこれもまたしょうもない同意が聞こえる。


「すみませんでした!トイレに行きます。」


さっきのロッカーに打ち付けられた派手な音と、りょうの大きな声に、オーナーが覗きに来る。

「なんかあったのか?サエキ。」

「なんでもないですよ、ちょっとりょうが転んで。大丈夫か、りょう。」

さっきとは別人のような態度のサエキは、ニッコリ笑って答える。

なんでもないならいいや、気をつけろよ、と言いながらオーナーが去っていく。



ひよひよのひよっこだった千枝理は大会社の本社勤務。

俺は…こんなはずじゃなかったのに。

一人前にアドバイスしたのは、せめてものプライド。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る