第14話 何かが始まる

 よくわからないままに連れられたのは、ショッピングモールのフードコートの横にあるシアトルかどっかが本社の某有名コーヒーチェーン。

売上の確認や、新しいキャンペーンなどいつもの軽い打合せだったらサロンの控え室か、すごく頑張った時にはねぎらいの意味もあるのかフードコートで飲み物を買ってもらってそこで済ませるのに、何か違うな〜、とぼんやり思っていたら、プーさんが話しかけてきた。


「佐山さん、何にする?」

「あ、アイスコーヒーでいいです」

「え〜〜〜?俺は、アレにするけどぉ」

そういって指差したのは、期間限定の生クリームがたっぷりのっているナントカフラペチーノ。オレンジ色だから、マンゴーっぽい。確かに美味しそうだ…。


「じゃ私もそれで」

涼しい顔して矢代さんが便乗する。便乗にニンマリしたプーさんが私の方を見て、ゆーっくり問いかける。

「い、い、のぉ〜〜??」

「あ…じゃあ私も、それで」

それを聞いた瞬間に、そうこなくちゃ、とか言いながらプーさんはマンゴーのフラペチーノを3つ頼む。あ、お金…と言いかけた千枝理を遮り、にっこり笑ってプーさんはフラペチーノをぐいっと差し出す。


「…美味しい。」

千枝理はボソリと呟く。いつものフードコートのちょっと薄いコーラとは違い、濃厚なクリームと爽やかなマンゴーの風味がたまらない。

「あの…なぜココなんですか?いつもだと隣のフードコートなのに…」

「さすが察しがいいね、佐山さん」

矢代さんはにっこり笑って続ける。

「大事な話を、大事な人にする時には場所もそれなりのところにするでしょ」





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