第13話 謎のプーさん
「はい…」
「あ、すみません。私、本社営業部の
そのおじさんは、薄い黄色のワイシャツに、赤いネクタイをしている。
声も低くてのんびりしていて、千枝理は瞬時にとあるキャラクターを連想した。
「プーさんみたいって思ったでしょ僕のこと!」
「いや…そんなことは…」
思考が見透かされているために目が泳ぐ。
「いや、思ったね。思った。」
ニヤニヤしながら明石さんはこちらを見ている。なんだかよくわからないが圧を感じる。変な人だなぁ、と千枝理は内心苦笑いをしていた。
「あのー…、佐山さん、ちょっとお話しできる?」
隣にいた店の担当の本社の女の人が遠慮がちにこちらを見る。
幸い今は朝の波が落ち着いているところだ。はい、と答えた千枝理に、プーさんがグイッと歩み寄り握手を求めて来た。
「よろしくぅ!佐山さぁん!」
なんなんだこのプーさんは。勢いに押されて思わず手を出してしまった。
しかもヒップホップ的な高い位置からの握手で、その後ハイタッチ的な一連の流れまで求めてくる。
なんとなく応じると、明石さんは満足したのか急に真顔になって隣の女の人に言った。
「矢代さん、お茶しよ、ここだとちょっと…。」
そうですね、と言いながら矢代さんは店内を見渡しながら一考している。
「私が抜けてもスタイリスト2人いるし、今日はモール内の体操教室も午前中はお休みで、ついでのお客様もいないので、大丈夫だと思いますよ…?」
千枝理が答えると、その様子に二人は同時に私の方を見た。
「ほら明石さん、言ったでしょ。」
「だな。」
なにやら二人はニヤッとしながら暗号文の様な会話を交わし、途端に満面の笑みで私の腕をガシッと組み、モール内のカフェへと行く事になった。
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