第8話 小さな光

ひとしきり泣いた後に千枝理は答えた。


「ありがとう…確かにね、シャンプーとかは好き…かも。なんかさ…お湯があったかいし、香りがふわーってしてくるのが嫌いじゃないって言うか…」

ずっとしまっていた葛藤を、こちらのペースで話すの頷きながら聞いてくれているりょうがいてくれることに、本当に救われたな、と思った。


「自信持てなくっても、消極的な選択でも大丈夫だと思う。昔、うちの母親がいつも言ってたけどさ、『置かれた場所で咲きなさい』って。こういう時に使うのかはよくわからないけど、好きなことが一つでもあれば、もう少し頑張ってみてもいいんじゃないの。」


ありがとう、と小さい声で何度も言う千枝理に、りょうはきっぱりこう言った。


「とりあえず、美容師なろう。今できること、やろうよ、千枝理。」



 その一言に千枝理はちょっと吹っ切れて、学校に行き、練習を積み、国家試験に合格して無事就職をした。就職先は、ショッピングモールの中に入ってる全国展開の美容室。内定をもらった時に一番にりょうにいったら、千枝理らしいなぁ、ってニヤニヤしてた。


「入社式いつ?」

「一日」

「一緒じゃん、その後ごはんかお茶しよか」

「うん!」


卒業しても、りょうと気軽に会える。

なんだかちょっとそわそわと嬉しい自分がいる。

なんだかんだ美容師なって良かったかも、と思いながら千枝理は春からの新しい生活に想いをせた。

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