第2話 美容師になるのって結構大変かも…

 オリエンテーションで聞いた話によると、美容師になるには、美容学校で規定時間の授業を受けて、かつ国家試験に合格しなければならないらしい。その国家試験は筆記と実技があるらしい。

 しかも、しかも、物理化学とかあるらしい…。物理数学大の苦手の完全に文系なのに…物理化学なんて高校卒業したらもう一生関わることないと思っていたのに…。


「え、美容師ナメてたかも…物理とかあるなんて結構難しそうじゃん…。」


千枝理の他にもそう思った生徒がたくさんいた様で、皆、入学式の時のテンションは何処へやら、なんだか急に下を向いたり毛先をいじったりしている人もチラホラ見える。


 美容学校で受ける授業は、国家試験に出る必修科目と、学校独自のカラーが出る選択必修科目というのがあるらしい。進路希望の時に色々調べた学校の特徴は、この選択必修とやらのことみたいだ。海外の美容やトレンドを学ぶ学校もあれば、ド派手なファッションショーを開催するところもある。

 千枝理の選んだ学校は、美容師資格を取得しながら、短大の卒業資格も得られるというタイプの学校で、技術者でありながら経営者を目指す、というコピーでここのところ人気があった。「美容師って給料安いんでしょ」「お店出してもみんなすぐ潰れちゃうだろ」などという保護者の懸念の払拭ふっしょくをかなり意識した運営方針の様だ。美容師になりたい、と言って反対された子でもここならなんとか許してもらえたパターンも多いらしい。そして、千枝理もその一人だった。

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