第2話 ダイイング・ストーリー
「被害者は
「まだ若いのに気の毒にな」
春日井は被害者の顔を眺めながら言った。
「そうですよね。心臓発作なんて……。ヒィィィ!
考えただけで、いっっ、息が止まりそうです!!」
「死ぬなよ。ややこしい」
春日井は川田に冷ややかな視線を送った。
『それにしても……、普通、心臓発作で苦しんだ後、こんな表情にはならないだろう』
「このガイシャ、なんだか幸せそうに微笑んでいますね……」
「そうだ。それが最大の違和感であり、この事件の謎を解く鍵だ。そしてガイシャ自身の通報による"褒め殺し殺人"の予告。これが意味するものが何なのか……」
「あっ警部。それに関しては先ほど鑑識より、被害者の通話履歴、スマホの閲覧履歴などの報告があり、何やら事件に関係すると思われる情報がありました!」
「川田! なぜそれを先に言わん!」
「すみません! あ! あの……」
「なんだ!」
「あの……ぅ」
「だからなんだ!!」
「その……お顔が近すぎて……」
そう言うと、川田は顔を真っ赤に
「す、すまん」
春日井は一つ咳払いをして、もう一度被害者の遺体へと向き直る。
「殺される……か、ガイシャは何者かに脅迫を受けていたのか?」
「はい! ガイシャはインスタグラム愛用者であり、死の直前まで操作していたようです。それで、死亡時刻のわずか数分前に"ストーリー"の投稿を行なっていました」
「川田……」
「は、はい!」
「ストーリーとは何だ! わかるように説明しろ!」
「……(課長は、知らないか……)」
川田は自身のスマホを取り出し、ごそごそと操作を始めた。
「川田?」
「あ、はい。インスタグラムのストーリーというのは、画像や動画を瞬時にネットに掲載し、拡散できるものです……。文字を入れたりして、ってあの、課長?」
春日井は震えていた。
「なんということだ……。それはダイイングメッセージじゃないか!」
「え、……。ええーー!!」
川田は驚きのあまり素っ頓狂な声を上げた。
「貸せ! なんて書いてあるんだ!」
「はい!」
川田が見せた画面には、美味しそうに魚にがっつく猫と川田の自撮りが写っていた。それを見た春日井は静止してワナワナと震える。
「あっ間違えた。はっはい! えっと、こちらです!」
川田は自分のスマホを取り下げ、鑑識から提出された被害者の死の直前のストーリーの画面を春日井に見せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます