第9話 11月 寒くても取り出し授業!

私が対応する県の小学校では、この時期でも子供たちは半袖短パンの体操着なんかを着ていて、小学校訪問する度、見てる方が寒くなったりします。

取り出しを行う小学校は、取り出しようの教室を用意してくださるので、そこへ生徒が来て、1対1、或は複数の児童相手の授業を行います。

外国人児童相手に、母学級の先生や、指導員としての通訳が一番苦労するのが、やはり掛け算を習得させる事と、漢字の学習をさせる事です。でも四則計算と漢字は社会に出てから、絶対必要不可欠なので、何としても覚えてもらわないといけないもので、教える方は力が入ります。

私が、小学校3年生から6年生になるまで取り出し授業を続けた男の子がいました。彼は1年生から就学していて、電話で彼と話したら、多分日本人と信じ込んでしまうほど日本語は達者です。クラスメートや先生と話すときも全く問題ない日本語で話しています。ところが、極度に学習に遅れが出ており、遂に6年生になっても掛け算をマスターすることができませんでした。何べん教えても、「さぶろくじゅうろく」、「さんごはちじゅうご」になってしまい、終いには私まで、「さぶろくじゅうろく」と間違えそうになりました。その上漢字が全然書けず、4年生の時に、1年生の漢字を書かせても「むずい(こういう言葉は今風の言葉がちゃんと使える)」と言って一切書けません。挙句の果てには、カタカナで「チョコレートパフェ」と書くように言っても、「むずい」の一点張り。。。。。。書けないんです!それが6年生の時です。いくら何でも小学校に6年通って、カタカナでチョコレートパフェって書けないのは大問題で、先生方も同じように考えており、6年生の進路相談で、担任を交えての三者面談で、特別支援学級のある中学校へ行かせた方がいいのではないか、と提案してみたのです。で、父兄の反応は、「特別支援教室なんて、とんでもない!うちの子はバカじゃありません。」、いや、父兄の気持ちも分かります。家に帰れば普通にテレビゲームし、テレビゲームに出てくる言葉や、テレビ番組も理解してるようですから、親から見たら、普通の児童です。が、小学校6年生で、漢字が一切読めない、書けない。掛け算ができないと言う事は当然割り算もできません。現時点で他の児童とはえらい学習能力の差が出て来ています。このままで、普通に該当学区の中学校に行っても、全くついていけないのは明確です。結局彼は、普通にその学区の中学に行きましたが、おそらく高校には絶対進学できませんから、おそらく中卒で就労してるのではないでしょうか?多分外国人専門の派遣会社が喜んで使おうとするでしょう。でも、翻訳は一切できないだろうし、車の免許を取るのも不可能です。本当に読めるのは、ひらがなだけですから。カタカナは読めても、書けません。今18歳くらいだと思うのですが、どうしているやら。。。。。


とある中学校で、ユニークな教頭先生にたまげるような話を聞きました。外国人ではありません。所謂「中二病」ってやつです。ある日、職員室の電話が鳴りました。教頭先生が出ると、東京駅の駅員さん。「お宅の生徒さんが、ここに居て、迎えに来て欲しいと言っています。」(ちなみにその中学校は、富士山の見える都市にあります。)、当人に代わって貰って話を聞くと、親と喧嘩して、有り金持って電車に乗って、東京に来たけど、そこで我に返ってどうしたら良いか分からなくて、学校に電話したとの事。担任が迎えに行ったそうです。

又暫くした頃、今度はいきなり福島県から電話掛けてきた男子生徒がいたそうです。彼もまた親と喧嘩して、家を飛び出て、なんとヒッチハイクして(懐かしの猿岩石か!?)福島県に行き、そこに着いたところで、我に返って、どうしたら良いか分からなくなって、学校に電話してきたそうで、やはり担任が迎えに行ったそうです。

暫く経った頃、また男子生徒が学校に電話してきたそうです。彼もやはり親と喧嘩して、その後ママチャリに飛び乗り、理由もなく西に向かって走り出したんだそうです。丸一日走って、道路っぱたで仮眠し、起きて又走って、又どこかで仮眠し、起きて又走って、ふと我に返って、自分がどこにいるかも分からなくなって、持ってた携帯で中学校に電話してきたそうです。教頭先生が「とにかくどこか電車の駅を探して、その駅名を言って来い!」と言うと、しばらくしてから、又彼から電話があって、駅名を伝えたそうです。で、担任が駅名を調べて唖然。教頭先生は彼に電話して、「今お前は京都にいるんだぞ!」と知らせました。で、父兄にも電話すると母親が言ったそうです。「教頭先生、うちの子何考えてるんでしょう?私には息子が何考えてるか分かりません。」、教頭先生は、「何か考えていると言うより、何も考えてないんじゃないですか?」としか答えられなかったそうです。

この子は結局親と連絡を取り、双方でよーいドン、で出発し、名古屋で落ち合えて帰ってきたそうです。登校してきた彼に教頭先生が、「親は何と言っていたのか?」と聞いたら、「笑ってた。」だそうです。そりゃあ笑うしかないだろうな、と思いました。

外国人でここまで面倒を起こす奴はいませんでした。ちょっとホッとしましたが、中学校の先生って大変だなって思いました。まあ、親御さんも大変ですが。

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