第6話 8月夏休み!

夏休みに入って、学校も休みなんだから、学校通訳もさぞや暇に、なんぞと思われるかもしれませんが、これがなかなかどうして。。。。。

夏休みに入ると、真面目なお母ちゃんたちが、私に子供の夏休みの内容を聞きにやってきます。夏休みの友はお約束です。後は、テーマ別に絵を描いていく、とかアイデア貯金箱とか、で、外国人にとってサイコーに手強いのはザ!読書感想文と自由研究。もう、自分が子供の頃、これで散々てこずったので、他人に偉そうなこと言えません。外国人だから、やらなくても良い、とは言えません。在日年数が長くて、日本語がかなり達者で、作文かけるような子は少ないけど、います。で、圧倒的に多いのは、「日本語分からないから、夏休みの宿題なんかできないもん!」と最初から投げてしまう子供です。真面目なお母さんによっては、8月20日の宿題ラストスパート週間になると、私のもう一つの職場に(公的機関)に子供連れて来て、分からない部分を私に質問させたりします。そういうお母さん達の熱意は、しっかり受け止めねばなりません。で、こういう熱意のあるお母ちゃんに育てられた子供は大抵高校進学まで果たします。以前、とある小学校の校長先生が言っておられた「基本は家庭です。」と言う言葉は、本当です。

それから、中学校3年生の生徒達に、高校見学、というものもやはり夏休み中に行われます。まあ、学ぶ意思を持って、行きたいと思った高校に見学に行くのは良い事なのですが、たまに強烈な勘違いを起こす生徒もいます。日本の高校には偏差値というレベル決定の基準があって、自分の成績がこれに大幅に外れた場合は、どんなにそこに進学したくとも、そこを受験するのは、戦闘機をハエたたきで撃ち落とす位難しいことです。日本の高校の場合、「行きたい高校」に行けることはあまりなく、「行ける高校」に行くと言う事が、悲しいかな偏差値と言うものによって決定されてしまうのです。っていうことを日本人の生徒なら薄々分かるのですが、ラテン系だとそうはいかない。ある日、私の所に外国人の母親から電話がありました。彼女の息子は、工学系の高等専門学校に見学に行きました。そこは5年間の就学期間になります。で、彼はその学校に惚れこんでしまい、そこまでは良いのですが、家に帰って親に、「自分の成績では、その高等専門学校にしか行けない!」と、みょうちきりんな意見をしたそうで、不審に思った母親が、私に確認の電話を入れてきたのです。私はその息子を直接知らなかったので、母親に聞きました。「息子さんの成績表ですがね、見た事ありますよね?で、全部4か5で占められているような場合は、その学校を受験しても大丈夫です。この県でトップレベルの学校ですから。で、息子さんの成績はどうなんですか?」、母親は「2と3で占められています。」、これでは私が言うまでもなく、絶対に担任が無謀だと言って、止める筈だと母親に説明しました。この高等専門学校に合格するのは日本人の生徒だって、相当成績優秀でないと無理なんです。大志を抱くのは良い事ですが、現時点でその成績では、何か奇跡が起こって入学できても、授業について行くのは無理かと思います。高校に行きたいと思った生徒に無難に高校へ行かせる為に偏差値というものがあるのですが、とかく物事を簡単に考えるラテン系には、そういうことを納得させるのも至難の技になります。

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