第5話7月その2 期末試験がやってまいりました!

中学校に入ると、例え外国人でも逃れられない定期テストがあります。

その為に試験になると、通訳が呼ばれ、テスト実施の補助をやるときがあります。机の間を歩いて周り、ホントに担任の先生よろしく、見て回っている時、とある、もう在日年数の長い男の子が、この地理の問題に悩んでいました。「国境と言うものは通常河川や山、海などで分けられているが、何故アフリカの国境は直線なのか?」、とうとうこの男の子は試験終了までその回答が書けませんでした。で、休み時間にその子に、ちょっとおいで、と世界地図の前に連れて来て、こういう理由で国境が直線なのだ、と説明したら、「そうだそうだ、先生が授業でそう言ってた!」と嬉しそうに言うのです。じゃあ、アンタそう書きなさいよ。質問が分からなくて悩んでいたんじゃなくて、単にテスト勉強してなかったな??在日年数が長い子達は、日本人の子供たちと同じようにテスト勉強すればある程度の成績は取れる筈なのですが、勉強好きな子達ばかりとは限らないのは日本人と同じです。

在日年数長くない中学生たちは、取り出して、個別にテストやらせます。主に数学と英語。でも問題説明すると、絶対、「それで先生、答えは?」と聞いて来るので、「答えは自分で考える!」と言い渡さねばなりません。社会や理科のテストになると、もう彼らに回答は不可能です。

一度、英語の問題用紙を、日本語の部分を全部スペイン語に訳して渡したら、その1年生の少年は、英語の担当に向かってのたまったそうです。「こんなポルトガル語みたいなスペイン語じゃ、分からない。」、私は本人の所に行って言いました。「ポルトガル語みたいなスペイン語って何?私、ポルトガル語習ったことないのよ。どうせ、テスト自体やりたくないから、そう言ったんでしょ?あのね、テストを母国語で翻訳してもらってできる、なんてめったにしてもらえることじゃないんだよ!何文句言ってるの?」彼は反論できませんでした。

外国人生徒の定期テストは、どうしてもテストやらせようとする先生側と、どうにかしてテストを逃れようとする外国人生徒たちのガチンコ勝負の戦場になるときがあります。


こういう気の毒な状況を見ていると、ホントに猫も杓子も、義務教育該当年齢で来日したら、小学校1年生のクラスに入れるべきだと思います。が、それを教育委員会の通訳の集まりで述べてくれた通訳もいたのですが、上からのコメントは「いじめの問題が出ると困りますから。」との事でした。どちらがどちらを虐めると言うのでしょう。年かさの子達にとっては、日本語だけでなく、日本の学校の規律を基礎から学べる良い機会になると思うし、高学年や中学生がその中に入ったら、よいお兄さん、お姉さんとして、1年生たちの面倒を見てくれることもあると思いますので、担任の先生にとっては好都合だと思います。またその年かさの子達も、自分より幼い子供たちの手前、あまり自分勝手な行動は取れないでしょうし、幼い彼らの相手をすることで自然に会話も上達すると思います。ウィンウィンの状況ではないですか。又、別に1年そっくりその学年にいなくても、体育なんかは該当学年でやらせても良いと思います。勉強のペースも1年生よりは早いと思いますから、習熟によっては、半年経ったら、2年生へ、ということでも良いと思います。

日本語何も分からないで、該当年齢のクラスに放り込まれて、ドロップアウトしてしまう例を何件も何件も見てしまいました。上手く中学校まで残ったとしても、そこから高校進学できるケースは、稀にしか起こりませんでした。外国には落第制度がありますので、別に、自分が該当年齢のクラスに居なくても、引け目を感じることはないと思うのですが。初めに小学校1年生のクラスに入れて貰って基礎から学ぶようにしてもらうだけで、親の都合で仕方なく日本に来た子供たちを、上手く日本の社会に順応できるように指導と救済ができる筈です。少子化も進むこのご時世、そうやって臨機応変に子供たちを救って貰えないでしょうか。


余談ですが、試験中の職員室での昼休みの一コマ。

3人の女子中学生が職員室にやって来て、国語の先生に質問しました。

生徒1「先生、方丈記を書いたのは鴨長明だよね?」

国語の先生 「そうですよ。」

生徒2「え?!私、紫式部って書いちゃった!」

国語の先生「え!?」

生徒3「え!?私、枕草子って書いちゃった!」

国語の先生「皆、よくもまあそんなでたらめを。。。。。」

最後の回答に至っては、人の名前ですらありません。私は笑ってしまいました。

ちょうどその時、外を見たら、昼休みなので、何人かの男子生徒がサッカーをやって遊んでいたのですが、数人がノートを片手にそれ見ながらサッカーしてるんです!女性の先生が、「勉強するかサッカーするか、どっちかにすればいいのに。」、男性の先生が「僕はあんなことできないなあ。。。。。」

ホントに学校と言う所は、日々ドラマです!

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