第4話 7月その1、さあ三者面談だ!
夏休みが近づくと、各小中学校から、三者面談の通訳の要請が入ります。これが又頭の痛い時期です。当然学校側からは事前に時間の割り振りが家庭に通知され、それが分からない父兄は子供に聞いたり、私に問い合わせが来たりして、面談の予定を知るのですが、まあ、ラテン系だけあって、時間通りに来ない親が多い。子供は日本の学校に慣れていれば慣れているだけ、自分の親が来ないことに居心地の悪さを感じます。見ていて可哀そうになります。で、事前に私が直接に、遅れると次の順番の父兄にも迷惑がかかるから、時間厳守で、と何遍もお願いしてあるのに、しれっと遅刻してくる親もいます。私はそういう親には、「次回は、私はもうあなた方の通訳には入りません。私も担任の先生も他に面談が入っていますから。」と、きっぱり言い渡してしまいました。もっと困るのが「仕事があるのに、面談なんかで呼び出して!」と上から目線で怒って面談に来る父兄。ある父親は私に言いました。「困るんですよ。仕事休んで学校なんかに来ないといけないのは!」そんなこと私に言われても困るし、親の義務だと思うのですが。でも教頭先生や担任の先生が「来てくださってありがとうございます。」と仰るので、この父親は余計高飛車な態度になるので困りました。
面談が始まっても一苦労。親が日本語を全く読めないのを良い事に、宿題もテスト勉強もやらず、惨憺たる超低空飛行の成績表が親と本人の前にさらけ出されます。で、親に成績表の見方を教えて、子供の現状を伝えると、いきなり自分の小学生の息子の頭をひっぱたいて、「アタシに嘘ばっかりついて!何なのこの成績は!」と激高するお母ちゃんがいたり、ある女子中学生の母親は、娘に私を指さして「この人の言ってることは本当なの?」と詰問しました。(実はこの母親、日本語が話せるけれど、読めない友人を通訳として連れて来ていたのです。娘にとっては好都合。自分にとって不都合な所をその御友人は読み取れないでしょうから。でも今回は違ったわけで。)そう聞かれた娘は、その成績表を前に、まさか担任と自分の親の前で、私がした成績表の説明は嘘だ、なんぞとは口が裂けても言えませんから、「本当だ。」と答えました。さあ、そこからお母ちゃん、既に鬼の形相。そりゃあそうだ。成績の悪さもずる休みなんかも、全部バレてしまうのですから。上記のお母ちゃんたちは、帰宅したら、きっと油でうがいしてお説教でしょう。
これが中学校3年生になると受験が絡んでくるので更に大変。突拍子もないこと行ってくる親もいます。母子家庭、4人兄弟の末っ子なのですが、母親の代わりに二十歳になった長兄が来て、「弟は、かのメッシがバルセロナでそうして育ったように、サッカー部のある高校で、寮に入れて、サッカーと勉強の両方ができるようにしてやりたいのですが。」私と担任は口をあんぐり。。。。。。確かにこの県はサッカーで有名ですよ。で、そういう寮があってスポーツ入学させてるところもあるでしょうよ。でも私立高校で、かなり費用もかかります。で、そもそもサッカーの才能があれば、そういう誘いも来るでしょうが、中体連終わった時点で、この少年にはどこの高校からもそうした話が出てこないそうです。それは彼の部活の顧問に確認しました。ですが、当人と長兄は、どうしてもメッシのようにサッカー漬けになれる高校生活を希望するのです。どこの高校からも今の時点で誘いが来ないのだから、普通に高校に行ってサッカー部に入部するしかないと説明するのが一苦労。随分とメッシを意識していますが、この少年がメッシと同じなのは、その国籍と身長だけです。サッカーのプロになりたい場合は、もう小学校の時点で目が出ていないとダメだと思うのですが。。。。。どうしてラテン系は、いつも物事を簡単に考えるのか?
教育委員会には、日本語が話せる通訳と、外国語を話せる日本人の通訳の2種類がおりますが、やはり三者面談ということになると、日本で育って、日本の学校のことが分かってる、日本人で外国語を話す通訳でないと困る場合があります。
又、自分のついてた嘘が白日の下に晒され、親に叱られる児童生徒が増えますから、この時期私はそういった児童生徒の「刺したい人リスト」には絶対にランクインしてたと思います。
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