第3話 6月 春の寝覚めと共に。。。。。

今回から、かかわった生徒の国籍も省かせて頂きます。記憶もあいまいになりましたので。とりあえず全てラテン系ということで続けます。。


6月に入ると、そろそろ学校によっては初々しい教育実習生達が入ってきます。私も訪問先でそういう教師の卵に出会います。私は大学時代教職課程を取らなかったので(スペイン語を教える学校なぞありませんから、スペイン語学科で教職課程取ってた友人はやむなく英語を教えることで、教育実習をやってたようです。)、彼らを見るにつけ「頑張って採用試験受かってね!」と心の中で応援します。

さて、この実習生に関わった困った中一の坊主!彼のクラスには可愛らしい女子実習生が入ってきました。もちろん男子学生は優しくて可愛い先生に(もちろん実習生の先生方は、普通の先生方と違ってビシバシ怒ったりしませんから)心ウキウキです。ましてや、この年齢になると男の子達は第二次成長も始まって、そろそろ所謂「目覚める」時期になります。で、普通の日本人の男の子ですと、そういう興味があってもモロに言う事は少なく、友達同士、女子に隠れてこそこそ話し合うのがせいぜいです。が、猪突猛進タイプのラテン系は違った!この目覚めた君は、気に入ったこの実習生の先生に、予定帳を提出する際に、「先生は○○〇が好きですか?先生、僕と○○〇してください。」と直接書いてしまったから、さあ大変!事態を重く見た実習生はもちろん担任に相談。本人は軽い気持ちで書いたらしいのですが、こんなことを実習生に対して、それも担任も見る予定帳に書くのは言語道断。大問題に発展し、私が計画外の訪問ということで、急遽呼び出され、この目覚めた一年生君は、担任、学年主任、教頭、挙句の果てに父兄まで呼ばれて、「これはセクシャルハラスメントに値する!」って、もうありとあらゆる人にお説教を受ける羽目に。叱られる側と通訳する側は一人ですが、説教する方は入れ替わり立ち代わり、です。説教する方は20分位ですが、聞く方は数時間の苦行。。。。。。終いには私も彼も誰にどう怒られたのか、思い出せないくらいに疲れ果てました。これで凝りてくれると良いのですが。。。。。。。懲りないだろうなあ。。。。。。

実はこの目覚めた君については、私は彼が小学生の頃から取り出し指導に通っていました。極めて勉怠学傾向が出ていて、国語の教科書を「内容を説明してあげるから、とにかく音読してください。」と言ったら、「そんなの読めるわけないじゃん。」と威張る始末。「勉強する気がないのなら、取り出し授業に来る必要はありません。クラスに戻っていいですよ。」と言ったら、担任に「あの先生が僕を虐めるんだ。」と訴えていました。彼が読めなかったのは「大造爺さんと雁」。おかげで、この物語を見る度この目覚めた君を思い出す私です。

ところが、担任の話によると、彼は2年前にあの小学校の国語の教材が読めなかったのに、図書館から、渡辺淳一さんの「うたかた」を借りてきて、暇さえあればその小説を、それも濡れ場ばっかり、ご丁寧に鉛筆で印をつけて、熟読してるそうです。「教科書は読めないって威張るくせに、渡辺淳一さんは読むんかい?!」と突っ込みたかったのですが、止めました。とにかく本を読まないと言語能力は伸びませんから。エロチックな小説でも日本語で読もうとする意欲が出るなら読むに越したことはありません。

後に、又彼の担任と話をする機会がありましたが、あの大説教日の帰宅後、更に両親からたっぷり叱られ、特に怒った母親は、もう本国に送って、軍隊学校に入れる!と息巻いたそうです。当時はビリーズブートキャンプが流行っておりました。担任は「いくらそんなところにぶち込んでも、本人の性格が極めて怠学傾向だし、あんなブートキャンプみたいな訓練に耐えられるとは思えないです。」と苦笑しておられました。

余談ですが、自衛官の知り合いに聞いたら、今時は入隊してくる新兵も、高校の時に運動部でばりばりやってた真面目な子達が多いそうです。運動部で規律が叩き込まれていて、訓練に真面目に取り組める性格でないと、軍隊では働けません。ましてや軍隊は矯正施設ではないので、苦しい事やきつい事が嫌いなラテン系のあの少年には、例えホントにそんな学校に放り込まれても適応は難しいと思います。


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