精霊の愛し子は虐げられる〜それを知った精霊達は…

モモンガ

 大好きだよ


 白い髪をボサボサに生やし、スッ…とした鼻にプクリとした唇、そして彼女の青い瞳は涙で溢れ、床を濡らしていた。


 彼女は驚きに固まっていた。



 夢…でしょうか?


 今、私の眼の前には信じられない光景が広がっています。


 いつものように、貴族の子供が通う学院で暴行や水をかけられ…。


 そして信じたくない物を見せつけられて助けを求めると突然、私の上から光が発せられました。


 すると…みすぼらしい格好をした私を、守るように透けている4匹の動物達…。


 1匹目は白くもふもふの狼さん。


 2匹目は全身が赤くもふもふの鳥さん。


 3匹目は金と黒の甲羅をした亀さん。


 4匹目は青い蛇さん。


 そして、腰まで伸ばした銀色の髪の男の人が、お肉がついていない私を、後ろから優しく抱きしめ『もう大丈夫、大丈夫だよ』と背中をポンポンと赤子をあやすように叩かれました。


 突然起きた事に驚き、じわじわと涙が溢れてくる。


 その男性は私の涙で、服が汚れるも気にした様子は無く…頭を撫でてくれた。


 暫くすると、耐えられない程の眠気が私を襲い…意識が途絶えた。


 男性はカレンから離れると、カレンに見せていた顔とは、正反対の怒りの形相したがそこにいた。


 『さて…と…。とりあえず君達全員、1回死のうか」












 16年前…この日、精霊の愛し子は生まれた。


 精霊の愛し子とは、精霊に愛され…自然を増やし、国を豊かにすると記されている。


 現に過去に生まれた、精霊の愛し子はある日を境に彼女の近くには精霊が寄り添っていたと記されていた。


 また、精霊の愛し子は女性でのみ生まれるとの事。


 そして…ある国は精霊の愛し子の血を残そうと、王族が無理やり結婚を迫り…その場で純潔を散らされた事で、精霊の怒りをかい、国そのものが地図から消えたと記されている…。


 だが、愚かしい事に…時間が過ぎることによって、書物に記されている事を信じる事はなくなり、いつしか精霊の愛し子は、国を豊かにすると認識されていた。


 もちろん、重く受け止めている国も存在するが…ごく少数なのは間違いない事だろう。


 そして、彼女が生まれたのは…精霊の愛し子を道具として認識している国だった。


 また、誰が精霊の愛し子か見極めるのは難しくない。


 精霊の愛し子は、100年に1人生まれている。


 さらに、精霊の愛し子は魔力を宿しておらず魔法を使う事はできない。


 よって、国々は100年が過ぎた年は、生まれたばかりの赤ん坊を教会に連れて行き…魔力が無いか調べる決まりとなっている。


 魔力がなかった赤ん坊は、精霊の愛し子が見極める為に国が1度預かる事になっている。


 対応は国によって違うが、精霊の愛し子じゃないと分かると…殺される子供も少なくない。


 魔力が無い者は、魔抜けと馬鹿にされ…差別の対象となっている事も関係していいるだろう。


 また、貴族の1人が精霊の愛し子となった事もあった。


 その子供の父親は、貴族の位が高く…精霊の愛し子の可能性を考えて、国が引き取る事を拒否した。


 王族は父親に交渉をしたが、上手くはいかず…精霊の愛し子と確定したわけではないので、諦める事にした。


 だが…その貴族の子供は精霊の愛し子だったのだ。


 父親は内心大喜びだった…。


 精霊の愛し子は、国を豊かにする人材だ。


 それによって、政治も大きく関わってくる。


 ただ…父親の計画が大きく狂う事になった。


 精霊を呼び出す事に成功した令嬢は言い放った。


 「ワタクシが貴方のご主人様よ? 光栄に思いなさい」


 その令嬢の言い草に、怒りを覚えた精霊は、自分の棲家に帰る事が起きたのだ。


 そして、帰った精霊は『今回の愛し子は駄目だ』と言い…この100年は精霊が現れる事は無かった。


 精霊を呼び出す事ができなくなった、令嬢は奴隷として売られ…父親は王族や他の国々の怒りを買い、首を跳ねられたとされている。


 この出来事が起きた事により、精霊の怒りを買わないように…精霊の愛し子を奴隷と同じような扱いをする国が増えた。


 もちろん、この事が精霊が知ったら国々に牙を剥くだろう。


 故に、時期がくるまで奴隷の首輪で縛りあげる。


 万が一、精霊の愛し子が国に牙を剥かないように…心の奥に傷を刻ませる。


 精霊は求められなければ、人間が住む場所に行けない。


 よって…精霊の怒りを買うことが無く、国を豊かにする事が出来るのだ。



 そんな時代に生まれてしまった、彼女…カレンも同じように国に引き取られた。


 カレンと同じように、精霊の愛し子候補の赤ん坊は一ヶ所に集められる。


 その数12人。


 少ないには、理由がある。


 愛する我が子を産んだのに、国に引き取られ奴隷のように働かされる事が確定しているので、わざわざ精霊の愛し子が生まれる年に妊娠する夫婦は多くない。


 赤ん坊はすくすく育ち…物心ついた頃に奴隷として扱われる。


 我儘や悪さすると鞭で打たれる。


 どんなに泣きわめこうとだ。


 そんな事が続き16年…。


 かつて12人いた、同年代は1人…また1人と減っていき、カレンとルウだけとなった。




 ……。





 「ごめんなさい! ごめんなさい!」


 私は聞き覚えのある声に、学園の窓を拭くのを止め…走った。


 声がする方に走り…角を曲がると、茶色の髪を白いゴムで後ろに纏め、私と同じ黒い首輪を付けた、たった1人の友達のルウちゃんを見つけた。


 床に伏せて謝っているルウちゃんを囲むように、4人の女性の貴族様がそこにいた。


 「どうしてくれるのよ! アンタの醜い姿を見たせいで私の眼が腐ってしまったじゃない!!」


 「ごめんなさい! ごめんなさい!」


 助けないと! ルウちゃんまでいなくなったら…。


 そんなの嫌だ!


 私は直ぐにルウちゃんの側まで駆け寄り…床に伏せた。


 「お願いします! ルウちゃんを許して下さい!! 代わりに私がどんな罰も受けますからお願いします! どうか! どうか…」


 「ウッ…汚らしい! 私に近づくんじゃないわよ!!」


 私を見た1人の貴族様は、顔をしかめたと思ったら…お腹に衝撃がきた。


 「ウッ…! ゲホッゲホッ! ごめんなさい…ごめんなさい」


 「カレン…ちゃん…」


 痛い…お腹を蹴られたみたい。


 謝らなくちゃ謝らなくちゃ。


 お腹の痛みに堪えながら…何度も頭を下げると、ふと影が視界に入る。

 次の瞬間、頭の後ろに衝撃を受けおでこを床に強く打った。


 たらり…とおでこから、じんわりと血が滲み出て、床を濡らす。


 「アンタが喋っていいと誰が言ったかしら? 分をわきまえなさい」


 「ご、ごめんなさい…」


 横目でルウちゃんを見ると、泣きそうな顔で私を見ていた。


 大丈夫。私は平気だよ。

と口パクで伝える。


 通じるか分からないけど…


 「アンタ…私を無視するなんて良いご身分ね? しっかりと体に刻まないと駄目かしら? 貴女達、分かってるわね?」


 『ええ、勿論ですわ』


 頭を踏まれながら、何とか確認すると…皮で出来た鞭が眼に入った。


 良かった…。


 ルウちゃんは鞭打ちの対象には、入ってないみたい。


 傷つくのは私だけでいい。


 ルウちゃんだけは、ルウちゃんだけは…離れたくない…から…。


 ビッシィ!!


 「ウッ!」


 空気を切る音と、共に…ボロボロの服を破れ、私の体に鞭がとどく。


 打たれた場所が赤くなり…膨れ上がる。


 ビッシィ!! ビッシィ!! ビッシィ!! ビッシィ!!


 「~~~!! ッ!! ウッ!!」


 あまりの痛さに、叫び声が出そうになるのを抑える。


 誰かに助けを求めても、答えてくれる人はいない…。


 横目でルウちゃん見ると、大粒の涙を流しながら…私を見ている。


 ルウちゃんはやっぱり優しいなぁ…。


 私は大丈夫だよ。


 私にとってはルウちゃんが傷つく方が嫌なんだ…。


 ルウちゃんに向けて、ニコリと精一杯の笑顔を送った。


 「!!」


 すると、今度は辛そうな顔になって…どこか覚悟を決めたように、唇に力を入れた。


 そして、ルウちゃんは立ち上がり、私に覆いかぶり…鞭が彼女に当たった。


 「ウウゥゥ!!」


 「ルウ…ちゃん? 駄目…だよ。どうして来た…の?」


 私を庇った、ルウちゃんに…鞭を打っていた貴族様は不機嫌そうに止めた。


 「アンタ、いったい何のつもり? アンタも鞭で打たれたいのかしら?」


 「もう…もう…カレンちゃんを傷つけるのは止めて下さい!!」


 ルウちゃんは、そう言うと…私を庇うように、立ち上がり腕を広げた。


 「駄目…だよ。ルウちゃん…、ルウちゃんまでいなくなったら、私…私…」


 止めて…ルウちゃん…お願い!


 「カレンちゃん…私も同じようにカレンちゃんが傷つくのは見たくないんです…」


 止めてよ…。


 お願いだから…。


 泣きながらそんな事言わないでよ…。


 私は涙が溢れそうになるのを必死に抑える。


 泣いちゃ駄目…泣いちゃ駄目…。


 これ以上、ルウちゃんを悲しませたくない!


 「アンタ…生意気ね。その眼も、その態度も、奴隷風情が私の前に立って話しかけるんじゃないわよ!!」


 「ッ!」


 貴族様に押されて、倒れそうになったルウちゃんを…何とか受け止めた。


 「私、そうゆう友情ごっこ大っ嫌いなの…もう、死んでもらえない?」


 「「!!」」


 貴族様の手の平に…炎の塊が出現し、炎の勢いはどんどん強まっていく


 「ルウちゃん…ごめんね助けられなくて…」


 そう言うと、ルウちゃんは首を横に振って笑った。


 「ううん。カレンちゃんと一緒にいられるなら私…怖くないよ?」


 そんなルウちゃんの、言葉に思わず笑みが溢れる。


 「私も…」


 強まる熱気を感じ、私達はお互いに手を取り…抱きしめ眼を閉じた。


 「死になさーー「何をしている?」」


 「「……」」


 いつまでも、襲ってこない炎に…恐る恐る眼を開けると、1人男性の貴族様がいた。


 「何をしているかと聞いているんだ」


 「ア、アラン王子!? どうしてここに…」


 王子?


 私に鞭を打っていた、貴族様に眼を向けると…必死に考えているのか、口をもごもごとさせていた。


 「わ、私はそこの奴隷が、貴族の私達に無礼を働き…処罰をしていたに過ぎませんわ」


 「今、殺そうとしているように見えたが…?」


 「そ、それは…」


 女性の貴族様は狼狽えたように、眼がキョロキョロと動いているように見えた。


 あの王子様は、もしかして良い人なのかな…?


 私達を助けて…くれるのかな?


 「父上から、殺すなと通達があったはずだ」


 「はい…」


 「だが、殺さなければ何をしても構わん」


 「「!!」」


 それだけ、言うと…王子様は、足音を鳴らしながら消えた。

 


 分かってた…分かってた事でしょ…。


 泣いたら駄目。


 震える体に力を入れて、泣かないように倒れないように我慢…。


 女性の貴族様が、私達を見て…鞭を懐にしまった。


 「興が#醒__さ__#めたわ、行くわよ」


 そう言って、貴族様は…いつのまにかできていた、人混みを散らすように手を振り…見えなくなった。


 良かった…ルンちゃんを守れ…て…。


 バタン。


 「ーーーちゃー」


 あれ? 眼が霞む…どうして? ルウちゃんどうして、まだ泣いているの? それに聞こえないよー?


 どこか遠くで、ルウちゃんが泣いている声を聞いてるように感じながら…意識を失った。





 ……。




 「こ、ここは…? 痛!」


 これは布団? いつもは藁と薄い布で寝ている筈なのに…。


 「ああ? 目覚めたなら、さっさとベットから降りろ! 邪魔なんだよ!!」


 カレンは縦に傷がある眼をした、中年の方に腕を掴まれ部屋から追い出された。


 この壁や柱…学園? 私は確か…


 「! そうだルウちゃん!!」


 今は何時!?


 外を見ると…太陽が昇りきっていない事から、昼前だと分かった。


 私は、急いでルウちゃんがいるかもしれない場所に走った。


 体が張り裂けそうになりながらも…痛みに耐え、走って、走って、走った。


 すると、いつも私とルウちゃんに仕事をくれる、眼鏡をかけた女性の方が部屋から出てきた。


 私は急いで走るのを止めた。


 「カレン…1日も仕事をサボるなんて随分と良いご身分じゃない? 貴方…自分の立場分かってるの?」


 「1日…?」


 嘘…そんなに眠っていたの?


 「ルウちゃんは?」


 「ルウ? ああ、アレなら貴方が目覚めないから、今日の2人分の仕事を頼んでーー」


 「!!」


 「あっ! カレン!! 戻ってきなさい!! 貴方はもうーー」


 何か嫌な予感がする…。


 お願い…お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い!!


 体が痛い…、でも止まったら駄目!


 今だけでもいいから…お願い!!


 「ルウちゃん!!」


 いない…。


 「ルウちゃん!!」


 ここにもいない…。


 「ルウ…ちゃん」


 どこ…? どこにいるの?


 「ル…ウちゃ…ん…どこぉ…?」


 駄目…泣いたら駄目…大丈夫…大丈夫…きっと…どこかにーー


 ドン!!


 「ウグ!!」


 背中に衝撃を受け…顔から地面に倒れた。


 「フフフ…いいざまね」


 後ろを振り向くと…昨日、私とルウちゃんに鞭を打った4人の貴族様がいた。


 ニヤニヤと笑う、彼女達に嫌な予感が大きくなる…。


 「聞いたわよ? アンタ…昨日一緒にいた奴隷の名前を叫びながら探し回っている…てね」


 周りを見ると…いつのまにか、私を囲むように大勢の貴族様が集まっていた。


 その中には、昨日の王子様も…。


 クスクスクスクス…。


 止めて…。


 「フフフ…いくら探しても、もういないのにね~?」


 止めてよ…。


 「だって…」


 お願い止めて…。


 何かが私の眼の前に飛んでくる…。


 それは…。


 「もう、


 ルウちゃんが、いつも身につけていた白いゴムが


 「もう! 止めてーーー!!!!」


 ルウちゃん! ルウちゃん! ルウちゃん! ルウちゃん! ルウちゃん!!


 ルウちゃんのゴムを右手に入れ…強く、強く抱きしめた。


 「アーハハハハハハ!! 良いわねその顔! アンタの泣き顔が見たかったのよ!!」


 「どうして…どうして…昨日殺さないって…言ったのに…!」


 「ああ…それは昨日までの話だな」


 「そんなのって…そんなのってないよ!!」


 「精霊の愛し子は1人。他は不要だ」


 ルウちゃん…。


 ルウちゃん…私、もう無理だよ…。


 ルウちゃんがいない世界なんて、私には耐えられないよ!!


 お願い…。


 誰か…。


 「…」


 『やっと…呼んでくれたね』


 優しい声と共に、物心つく頃から嵌められていた、奴隷の首輪が…大きな音を立て弾け飛んだ。






 精霊視点


 『さて…と…。とりあえず君達全員、1回死のうか』


 ああ…こんなに、イライラしたのは何百年ぶりだろう…。


 「ま、まさか精れーー「パァン!」」


 「あ、アラン王ーー「パァン!」」


 空気を何度も圧縮し…放つ。


 『精霊王様、我々も宜しいですか?』


 『いいよ、許可する』


 僕が許可すると…属性の頂点を司る、四精霊が動き出す。


 ある者は、無数の風の刃を生み出し…大きな渦となり、全てを飲み込む。


 ある者は、上空から地獄の業火を放ち…全てを焼かれる。


 ある者は、土を割り…人や建物を、地面の奥底へと落としていく。


 ある者は、生き物の水分を奪う。そして彼女を傷つけた全ての命を奪っていく。


 「ヒィィィィイ!!!!」


 「い、嫌だぁぁ助けー「パァン!」」


 僕はね…、力を使えば人間界を覗く事が出来るんだ。

 でも、この力は軽々しく使える物じゃない。でも、今見ないと後悔すると感じたんだ。


 そして、覗いてみたら一眼見たときに、何て綺麗な魂だろうって思ったんだ。


 そして、年が増えても…その輝きは変わらずーーいや、寧ろ更に磨きがかかっている。


 どんなに酷い目にあおうとも…だ。


 そんな彼女が…だ…。


 泣いていたんだ。


 誰にも助けを求めなかった彼女が、「助けて」…と言ったんだ。


 『覚悟は出来ているんだろうな…人間ども、正真正銘、僕達の愛し子を傷つけたんだ…。

 誰1人ここから逃げられると思うなよ?』


 さて…。


 ジロリ…と視線を下げると、腰が抜けたのか立ち上がることが出来ず、1人の人間が恐怖に染まっていた。


 『君だけは、特別だ。どうやら君は、1番カレンの心を傷つけた人間みたいだからねぇ~』


 と…言っても、この人間のおかげで、カレンは助けを求め、僕達が人間界に来れたわけだけど…。


 それとこれとは、別だよね…?


 「ふ、ふざけんじゃないわよ!! 奴隷をどう扱おうが私の勝手でしょ!? 王族からも許可が出ていたんだから、責められるいわれはないわ!!」


 『奴隷をどう扱おうが勝手ね…。確かに一理あるね』


 「な、ならーー」


 人差し指をくるりと回し…光の輪っかを、人間の首に通ると、キュッ! と隙間なく嵌った。


 『なら、僕も奴隷をどう扱おうが勝手だよね?』


 そう言うと…、人間の顔がみるみる内に青くなっていった。


 「じょ…冗談よね?」


 『それが嫌なら、今すぐ殺してもいいんだよ?』


 徐々に締まっていく、光の輪っかに…焦ったように立ち上がった。


 「なる! なります! だから殺さないで!!」


 必死にすがり寄ってくる、人間を突き飛ばす。


 『あっそうそう、精霊達はカレンの事を気に入ってるみたいだから、もしかしたら死んだ方が幸せだったかもねー』


 「う、嘘…でしょ?」


 『嘘だと思う?』


 僕が本気で言っていると理解すると、人間は暴れ出した。


 「イヤァァアア!! 離して!! 誰か!! 誰か助けてぇぇええ!!!!」


 『もう、手遅れだよ、人間。

 君は超えてはいけない一線を超えてしまった。報いは受けてもらう』


 「ああああぁぁぁ!!!!」


 『うるさい』


 指を鳴らし、仮死状態にする。


 動かなくなった人間を、光の膜で覆いプカプカと浮かせた。


 周りを見てみると、既にこの国の生命反応は、この人間とカレン以外残ってはいなかった。


 はぁ~僕の分も残して置いてくれてもいいじゃないか…。


 特に王族とかさ~


 まぁ、四精霊達もカレンの様子を見てすんごい怒ってたからね…。


 仕方ないか…。


 『『『『精霊王様、殲滅完了いたしました』』』』


 『はいはい、ご苦労様~じゃあこの人間とカレンを連れて、先に精霊界に戻ってて~』


 『精霊王様はどうされるのですか?』


 『んふふ~ひ・み・つ』


 『分かりました』


 ん~、いい子。詮索しないのは良いことだよ~


 光となって消えていく、カレンと四精霊とおまけを見送った。


 『よし、やりますか。喜んでくれるといいなぁ~』






 ……。






 「ん…ここは?」


 「ここは精霊界みたいですよ、カレンちゃん」


 「え…?」


 嘘…。


 だって…


 死んだはずじゃ…。


 「ルヴ…ちゃ…ん」


 「はい、カレンちゃん。ルウですよ」


 『やぁ…喜んでくれたかな? 彼女はカレンの大切な友人だったみたいだからね!!

 特別サービスで、精霊として生まれ変わらせてあげたよ! 肉体は駄目だったけど、魂は無事だったから出来た事だよ! 運が良かったね!』


 布団から、起き上がり…ルウちゃんを、抱きしめた。


 「ルヴぢゃん! ルヴぢゃん! ルヴぢゃん! ルヴぢゃん! ルヴぢゃん! 良がっだよぉ~、また会えだよ~」


 頭をぐりぐりと…ルウちゃんに擦りつけ、もう2度と離れない意思を持って、キツく抱きしめた。


 そんな私をルウちゃんは、「仕方ないなぁ~」と言いながら、頭を撫でてくれた。


 『って…聞いてないねこりゃ。まぁ、感動の再会だし水を差すのは厳禁だよね。大人しく待ってよ~と』


 「ねぇ、カレンちゃん」


 「なぁにぃ? ルヴぢゃん」


 「大好きだよ」


 え?


 そう言って彼女は、カレンの唇を自分唇を重ねた。


 『あああーーーーー!!!!』


 「!?!!?!!」


 へ? へ? へ? 何で? どうして?


 「ふふふ…カレンちゃん御馳走」


 ペロリと自分の唇を、舌で舐めるルウちゃんに、ドキッ! と感じた事のない感情で分けが分からないよぉぉ…。


 「あ…うぇ…?」


 『君!! カレンの友達だったんじゃないの!?』


 精霊さん? 私を助けてくれた…。


 そして何で、精霊さんとルウちゃんが掴みあってるの!?


 「ぅぅゔ~どうすればいいのぉ~」


 『カレン! 僕の方があの子より、ず~と、ず~~と大好きだからね!!』


 「カレンちゃん!! 私の方がも~~~と大好きですからね!! なんならもう1度します?」


 『僕もぉ~カレン好きぃ~』


 『僕もぉ』『私もぉ』『もぉ~』


 『無論、我等もだ』


 「わわわ!!」


 もふもふの精霊さんや、いろんな精霊さんに押し倒され…動物型の精霊さんにたっぷりと舐められる。


 くるじぃ…。


 でも…温かくて幸せな気分。


 胸の奥がポカポカと、私が何かに埋め尽くされていく…。


 それは決して不快じゃない。


 今なら…自然に笑えるかな?


 「精霊さん、私を助けて…ルウちゃんを助けてくれてありがとうございます」


 「ありがとうございます」


 私に続いて、ルウちゃんも精霊の皆に頭を下げ…顔を赤くする。


 精霊さんやルウちゃんは言ってくれたんだ、私も恥ずかしいけど…言わなきゃ駄目…だよね?


 すぅ~はぁ~すぅ~


 よし!


 言うぞ…。


 「わ、私も皆の事が…大好きぃ…です…」


 ピタッ!!


 えっ!? どうして皆止まるの!? 変…だったかな…?


 ぅぅぅ~恥ずかしいよぉ~


 「カレンちゃ~ん!!」


 「えっ!? きゃあああ!!」


 『あ!! 君!! 2度もやらせるかぁぁぁ!!」


 『『『『『カレンー!!』』』』』


 「もが…もが!」


 くるじぃ…。


 でも…。


 今はとっても幸せです。


 皆ありがとう、大好きだよ。




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 どうでしたか?


 作者もびっくりのレズ要素が入っておりました。


 最初はこんなつもりじゃなかったんだけどね、きっとこうなる運命だったのさ…。


 自分の中では、今まで1番上手く書くことが出来たと思っています!


 出来たら感想を送ってくれると嬉しいです。


 では、体調が治り次第、スライム作品の続き執筆します。


 ばいちゃ!

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精霊の愛し子は虐げられる〜それを知った精霊達は… モモンガ @morimorimomon

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