猫物語(仮)

工藤知広

猫、言葉を話す

猫の耳というものは本当に不思議なものだ。

猫の耳は人の耳の何倍も優れていると思わせる。

私は猫の耳をモフモフと触ってやる。

「にゃぁっ、にゃにゃぁっ」と鳴きながら、猫が尻尾を巻き付ける。

猫の耳の感触はとても好き。

「懐かれてるみたいで、かわいい。……もうちょっと触ってみてもいいか……?」

再度、耳を触ろうとした瞬間だった。

「にゃー、にゃにゃにゃにゃ――――!」

突然、甲高い音が鳴り響き猫の鳴き声は止んだ。

黒猫は顔を左右に振りながらこちらを見ている。

もしかして、私を避けている!?

「にゃにゃぁぁぁぁぁーんっ!」

私は何とか猫の耳元で声を出してみた。

するとその黒猫は鳴き声を上げてくれない。

「あの、お客様?」

「にゃん!?」

いきなり耳元でささやかれたのに驚いて猫語で応答してしまった。

そして、黒猫が私を睨む。


――――この声は、この態度はあまりにも予想外だ――――


私、何か悪いことしてたっけ……?

私が頭の中で混乱しているうちに、黒猫が慌てその場で身振り手振りをしている。

しかし、黒猫も相当な狼狽振りだ。

「その声は……まさか……」

やっとの思いで声を出す。

「にゃにゃ!?」

「いや、何でもないよ。ごめんね?」

「にゃにゃぁーん、にゃにゃにゃあぁぁっ!」

私の言葉に黒猫が鳴く。

そして、猫が私に抱き着いて「にゃーん、にゃにゃにゃにゃにゃにゃ」と鳴いている。

「あの……猫の鳴き声が……」

「はい、お客様? 大丈夫ですか?」

「えっと……」

私は黒猫の言葉に頭が混乱している。

「えっ、猫さんの "声" が聞こえたんですけど―――」

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