3-1
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いつもより効率的に多くの仕事を消化し、この分なら今日一日で溜まっていた依頼が
自分はここまで感情をオープンにするタイプだっただろうか?彼と出会ってから、まだそれほど時間は経っていないはずなのに、既に彼と出会うまでの自分を思い出せない。彼といると、ひどく楽に呼吸が出来る。きっと、初対面で泣き顔を見られているというのが大きいのだけれど、無理に自分を取り
今まで、しっかりしなくちゃとか、私が支えなきゃとか、私が模範を示さなきゃとか。そういった義務感だとか責任感ばかりに背中を押されて、私自身がどうしたいか、どうするべきかを考える余裕さえなかったように思える。いや、むしろ考えなくて済むように、無意識に自分を追い込んでいたのかも知れない。日々の忙しさの中で、自分の中に残された傷から、少しでも長く目を背けていられるように。
本当は知っていた。分かり切っていた。私は全然、強くなんかないのだということを。周囲が期待して、私はそれに合わせていただけだ。
それでも、エレジーと生きていれば、いつかは自分の罪と向き合えるような気がしている。それはきっと、彼が私と似たような『痛み』を持っているからだ。
今は、こんな風に
「ディアナ、何か考え事ですか?」
「ええ。今日のおまかせランチのメインは、何だろうって」
「……貴女は本当に。職場ではあんなにもクールに振る舞っているのに、ギャップが激しすぎませんか?」
「大丈夫。私のタガが外れるのは、基本的に食のことに関してだけよ。そして、職場の同僚と一緒に食事はしないの」
「それはそれで、貴女の交友関係に関して、かなりの不安が残るのですが……っ」
呆れ顔で私を眺めていたエレジーの表情が、途端に真剣なものになる。
「どうしたの」
「……大変申し上げにくいのですが、只今入ってきた新着の依頼が、緊急性の高いものであると想定されます。明記はされておりませんが、依頼の特質上、恐らく本日中でなければ解決出来ないかと」
「面談の必要は」
「恐らく必要です。記載されている住所から、依頼主はフリューリンク地区に在住。在宅中です。依頼対象は同地区の地下階層『エンデ』に存在すると推測されます」
「行くわよ」
迷わず頷いて、元来た道を走り出す。この時間なら、トラムを捕まえた方が早い。いや、本来は捕まえるものではなく、待つものなのだけれど。
「エレジー、局長に繋げて」
「只今」
きっかり三回のコールで、AICOサポート課リンネ局長への直通回線が繋がった。目の前に展開される仮想スクリーンに、局長のウンザリしたような顔が大写しにされる。
「ディアナ、今度はどんな面倒事だ」
「人をトラブルメーカー呼ばわりしたこと、後で後悔して下さい。先程通達された依頼のため、現地へ向かいます。後出しですが、出動手続きをお願いします」
「今からか!そんなに緊急性の高い案件だったか?」
「内容はまだ知りません。ただ、私のパートナーが、今動くべきだと判断しました」
「……わーったよ、行って来い。って、おい。出動用の職員パスはどうする!あれ無いと、移動が経費で落ちんぞー」
「ご心配なく。顔パスで行きます」
「はぁ?あーお前はそうだったか。長らくこんなこと無かったもんで忘れてたわ。まあ、気を付けてな」
「はい」
面倒臭そうにヒラヒラと手を振った局長に、端的な返事を返して通信を切る。
「エレジー、先方にアポイントメントを」
「既に取りました」
「上出来。道々、依頼内容を報告お願い」
そこまで告げたところで、ぐきゅるるると、私のお腹が情けない悲鳴を挙げた。
「……私の、ひるごはん」
「……次の角を曲がった先にあるグローサリーで、バナナとミルクを買うことをお勧めします。バナナは短時間での栄養補給にもってこいですし、ミルクはお腹に溜まります。何よりバナナと合いますよ。ですから、その小動物めいた情けない顔を、早くどうにかしましょう」
「そうするわ」
こういった地味なところでも能力を発揮してくる有能なAIに従って、バナナとミルクを購入し、再び走り出す。
遠くに見慣れた旗を掲げたトラムを発見し、走りながら恥も外聞もなく叫んだ。
「おじさぁぁああああん!!」
ギョッとしたような顔でこちらを振り返る人々を、努めて気にしないように全力疾走していると、前方のトラムがキキキーっと不穏な音を立てて急停車した。乗客から悲鳴が
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